第110話 47日目

47日目


アムスデンジュン軍の猛攻に押されたウィスタリア人は、遂にピスガ・ジェベル山頂の岩体部まで後退を余儀なくされた。

結果、山腹にあった最後の水場を失った。


この時点でウィスタリア人の運命はほぼ決した。

キャンプ全体のタンクを集めても、せいぜい2、3日分の蓄えしかない。


48日目


ヒルプシムが死んだ。

死にたくない、家に帰して、とうわ言を繰り返しながら死んでいった。



ウィスタリア人4000人の命を繋ぎ止める防衛線は、今や、アマリリスのいる位置からも良く見える、特徴的な三角形の岩塊のすぐ下にある。

紡錘ぼうすい形の山頂台地を船に見立てると、台地の東端に位置するため、『みよし岩』と呼ばれていた。


舳岩はここよりも僅かに標高が低いが、キャンプとの間には緩やかな鞍部があるだけで、直線距離はわずか数百メートル。

つまり舳岩を占領すれば、敵は、迫撃砲で直接このキャンプを攻撃できる。

そうなったら、終わりだ。


だが確実にその日は近づいている。

それも、すぐ明日か、ひょっとすると今日かもしれない。


50日目


絶望した何家族かが、まさにアマリリスが考えていた方法で、自らと子どもの命を絶った。


51日目


水がなくなった。


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