第101話 消えゆく光に問う

誰かが死んで、埋葬するとき、

魂の救済を祈る言葉が、問いかけの言葉となって人々の口にのぼった。


「彼は救済されたのでしょうか?

苦しみから解放されたのでしょうか?」


はじめは断腸の悲しみだった同胞の死も、今はむしろ安らかに受け入れられていた。

この悲惨な戦場を一日長く生き延びるより、早々に神に召される方が死者のためだと考えはじめたからでもあり、

自分達も、遠からず彼らの列に加わることを意識しはじめたからでもあった。



アマリリスは黙祷もくとうから目を開いた。

足元には新しい、小さな墓標があり、目の前に広がる、草におおわれた薄暗い斜面のそこらじゅうに、同じような墓標が立ち並んでいた。


埋葬に立ち会った人々が、誰からともなく立ち去り、残ったのは一人アマリリスだけになった。

今日ここに埋葬された、5歳の男の子に、親類はもういないのだろう。


短すぎる一生や、孤独で苦しい死が憐れではあっても、そのことに涙はこぼれない。

両親が待つ場所に行けたことを、ただ祈るばかりだ。



それでも。


墓地の向こうの太陽は、ピスガ山の断崖をなぞって、水平線に沈もうとしている。

消え行く光に、アマリリスは問いかけた。


「アザトヴェレン?(救済を?)」


ただ、生存からの解放によって、本当に彼が救済を得られたのかどうかが気がかりだった。

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