ピスガ・ジェベルⅣ 決戦

第99話 軍港都市

トレヴェシア海北東の岸、ラフレシア領フィカス。


領土の大部分が寒冷地で占められるラフレシア本国の中では、最も温暖な都市の一つである。

カラカシス山脈を隔てたウィスタリアに似た気候だが、こちらの方がやや雨が多い。


トレヴェシア海を見下ろす緑濃い丘には、古い教会の塔に混じって、ラフレシア富裕層や要人の別荘が立ち並ぶ国内有数の保養地だが、

同時に、ラフレシア海軍、トレヴェシア艦隊の母港の一つでもある。


開戦以来フィカスは、リナリア汗国攻略、タマリスク帝都、ディモルフォセカ包囲作戦という、2つの重要な軍事作戦の後方輸送を引き受け、

海水浴、日光浴と楽しむ保養客の傍ら、軍港内の海軍司令部は、殺人的な忙しさだった。


ウィスタリアからやって来たという『使者』は、多忙を理由に、既に3日、トレヴェシア艦隊提督との会談を先延ばしにされていた。

だが、別の事情もあった。

司令官は、この問題への対応について、中央、帝国政府の判断を仰ぐ必要があったのである。


4日目、『使者』はようやく、提督執務室に通された。

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