第97話 砲台の賑い
麓のタマリスク軍陣地から上がった爆煙に、5合目『砲台』のウィスタリア人の間からは大歓声が上がった。
タマリスク将校は双眼鏡から目を離し、計算表を手に取った。
「第2射の用意。
1番は仰角プラス2分の1毛、方位マイナス3厘。
2番は、、、」
明瞭な声で繰り出される照準修正の指示を書き留め、急ごしらえの『砲兵』が、それぞれの担当の大砲に走る。
「各個、発砲。」
5門の大砲が立て続けに火を吹いた。
射手までも叩きのめすような轟音と反動から放出された黒い球体は、明らかに微調整を誤った2弾を除いて、麓の一点に向かって吸い寄せられるように落下して行った。
装甲車が次々と被弾し、爆風に人馬が木の葉のように舞う大混乱の中、それでも機関士達は迅速に行動し、補助動力を使って車両を急発進させた。
そのおかげで機甲化部隊は壊滅をまぬがれた。
キューポラの車両砲が山の上方を向いて次々と火を吹く。
しかし砲弾は敵の砲煙まで到達出来ず、手前の森に落ちてしまう。
この無意味な反撃の間にも、1編成が吹き飛ばされた。
主動力が作動し、幸運な13編成は、黒い煤煙を吐きながら遠ざかっていった。
大砲の射程を外れたところで停車したが、彼らがその後、最後の日まで、それ以上近付いてくることはなかった。
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