第87話 ピスガ山遠望
攻略開始は翌日との連絡を受け、キューポラの当直以外の兵士たちは武装を解き、思い思いに休養に入った。
車両の内部には人数分の簡易寝台が確保されていたが、うだるような真夏の暑さの中、食後すぐに鋼鉄の箱の蚕棚のような寝床に横になろうという者は少なく、
多くは消灯まで、屋外の草の上で過ごしていた。
明日の戦場となる山は、薄暮の濃紺の空に半ば溶け込み、そのまま消えて行く幻のように見えた。
それでいて、得体の知れない邪悪な目論見を秘めた魔物のようにも思えるのは、事前に説明を受けた、この山に立て籠る奇妙な反乱分子のことが頭にあるからだろうか。
草の上に寝転び、あるいはぶらぶら歩き回って煙草をふかしながら、見れば見るほど奇怪な岩山を見上げ、
精鋭軍の兵士たちは、彼らが撃滅を命令され、過剰とも思えるほどの装備を与えられて任務についた目標のことを思い返していた。
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