ピスガ・ジェベルⅢ 第2の戦闘

第86話 27日目

初戦でこうむった大きな痛手の悲しみは癒えぬまま、

依然として、トレヴェシア海の無慈悲な水平線に船の影は見えず、

ウィスタリア人は傷つき疲れた身に鞭打って、防衛陣地の強化、戦闘訓練に明け暮れていた。


籠城戦開始から27日目。

新たな敵部隊発見の報告が、見張りから入った。

みよし岩の高台に駆けつけたリーダーたちは一様に、言葉を失った。


先日の部隊が現れた東の荒れ地の道ではなく、南の、タマリスクとの国境の方角から、巨大な機甲化車両が列をなし、煤煙と土煙を上げてこちらに向かってくる所だった。



牽引車それぞれに2両の装甲車両を引いた20編成の車両は、ピスガ・ジェベルの東側山麓を取り囲むように、2列の弧を描いて停車した。

屋根に砲塔を備えた車両から、武装した兵士が一斉に飛び出し、それぞれの車両の前に整列した。

車両あたり50人とすれば、1000人の部隊だ。

それぞれが自動小銃や軽機関銃で武装しているのはもちろん、

赤い制服の上に、黒光りする防弾鎧衣とヘルメットに脚絆と籠手を身に付け、さらに大きな盾を装備し、この間の歩兵部隊が貧弱に思えてくるほどの物々しさだった。


トレヴェシア方面機甲化師団、第6大隊の派遣は、身中の虫を、獅子が本気になって叩き潰しにかかったことの現れだった。

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