第58話 小鳥の瞼

小鳥が目覚める頃、馬車の列は出ていったときと同じように戻ってきた。

男たちはひどく憔悴しょうすいし、ぎらぎらする目を見開き、荷台には食料の袋が積み上げられていた。


誰もが、それが意味することを分かっていた。

アムスデンジュン人の村を襲ったのだ。

ウィスタリア人が狩り集められたあと、無人になった村に住み着いていた人たちを。


男たちだけで出掛けるのは、もちろん、行動しやすいため、残虐な場面を彼らの妻や子どもたちに見せないためだったが、

彼らの罪を、彼らだけの中に閉じ込めておくためでもあった。


ウィスタリア人の家に上がり込んでいたアムスデンジュン人を襲い、食料や武器を奪い、殺害することに、もはや誰も躊躇しなかった。


良心の呵責かしゃくを覚える心があったとしても、彼らの生活、同胞を奪った仇敵を前に、引き金にかかる指を弛める理由にはならなかった。


彼らの人生を奪った者たちと、彼ら自身を区別するものは、彼らの後ろに控えている妻、恋人、子供たち、そして何の罪もなく、無残に殺された同胞の存在だった。


だがそれは、大きな違いだろうか?


人間が人間を殺すことの罪深さ、――法廷や神の前における審判の軽重ではなく、自分自身に対して認める、永劫えいごうに消えない重苦しさを、

たとえ、殺された同胞の無念、報復の正当性、彼らの生き続ける権利、

そんな言葉を並べてみたところで、何が変わるわけでもない。


誰もそんなことは言わないし、考えもしない。

けれど誰もが、

驚いたことに、家族を殺されるなどしてアムスデンジュン人に深い恨みを持ち、率先してなるべく多くの敵対民族を殺そうとする者までも、

誰もが、自分の魂に対して苦しんでいた。


そして襲撃の場に居合わせたら、例え直接手を下さなくても、同じ罪を背負うように思われ、

自分の愛する者たちが、この罪に汚染されることがひどく恐ろしかった。

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