第5話 森の国

=森の国 ディープフォレスト=


此処は、木が踊り。花が歌い。草が飛び跳ね。

植物達が、楽しそうに暮らす場所。


ーー『どうなってるんだ?』

セツナは、さっきまで起きた事、凪の安否、そして今目の前に広がる景色を

必死で理解しようとした。

観た事のない物達が、人間の様に、動き回っている。


シュルルッ。

と何か足元で、音がしたと、足元を見ると

木のツルが、自分の足元に巻き付き始めていた。

気づいた瞬間、セツナの足を引っ張り体制を崩してしまうと

前方からセツナを、木の傭兵達が、襲い掛かってきた。


―—『ヤバいっ!』

と、必死に足に絡みついた木々を、手で引き裂こうとするも

頑丈に巻き付いていて中々取れない。


もう駄目か。っと諦め始めた瞬間。

一気に木の傭兵達を、薙ぎ倒す3匹の動物たち。

その姿もまた、人間の兵士の様で、刀を持ち二足で行動し、

自分よりも立派な服をまとっている。


またも、理解する間もなく、セツナに絡みついた木々を切り裂き

1匹のゴリラが、セツナを背負いその場から走り去る。


「馬鹿か貴様ッ!!何故 魔女の森なんぞに近づいた!!」

―—俺は。

「それに、なんだその姿は!?まるで人間じゃないか!!」

――俺は、人間だ!!それに、此処は、何処なんだよ!あれは、なんだ!?

「人間だと・・・。笑わせるな。この国に、人間は、1人しかいない。」

――1人?

「なんだお前、本当に、他所の国から来たのか?」

――あんたは、なんだ。それに、さっきのは。

「・・・。」

ゴリラは、少し間を開け、深刻そうに話を始めた。


「この国の名は、“ディープフォレスト”」

「さっきのは、魔女が作り出した 植物の兵士プラントソルジャーだ」

――俺が、聞いた植物は、喋ったり襲ってきたりしないはずだ。

「そりゃそうさ。奴らは、植物以外のモノを狩る為だけに、生み出された兵器だ」

――それに、人間が一人って。その人の所へ・・・

「さっきも言っただろう。」

「この国の人間は、魔女。たった一人だ。」

――じゃあ他の人間は、どうなったんだ?

「・・・。呪いによって滅ぼされた。」

――え?


「我もそう。さっきの奴等もそう。それに。」

植物の兵士達プラントソルジャーも。元は、人間だ」


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