それ、なんの影響だよ

 とある休日。昼下がりの公園。子供たちの声が賑わいを見せ、ブランコや鉄棒、砂場でわたむれて遊んでいる、微笑ましい光景が広がっていた。


 単身、子供の美鈴みすずと一緒に公園に来ていた。美鈴はひとり鉄棒で遊んでいる。砂場へ目を向けると、幼稚園児だろうか、小さな男の子と女の子、それぞれ四名が、お飯事ままごとのように戯れあう。さながらテレビドラマのワンシーンのように家でくつろぐ、夫婦役と、別役に別れて演技をしているようだった。


「おかえりなさい、あなた」

「ただいま」

「ご飯にしますか? それともお風呂?」

「ご飯にしようかな。桜は、もう寝てるの?」

「はい。さっき、しゅんくんが、来てたけど、もうぐっすりです。寝顔見ますか?」

「そうだね。ちょっと桜、見てくる」

「ガチャ、どれどれ桜は寝てるかな?」

「やばい、お父さんが来た。迅くん、隠れて」

「うん。どうしよう。でもどこに?」

「一緒にベッドに入ってたらわからない」

「ガチャ。桜……。いい寝顔だ。飯でもするか」

「アハハハッ。モゾモゾしたら迅くんったら。こそばいよお!」

「お前、だっ、誰だ! うちの娘に何をした!」

「お、お父さんごめんなさい」

「僕、桜ちゃんが好きなんです。桜、いや桜ちゃんを僕にください」

「ダメだ。不届きものは、出ていけ。二度とウチに入るな。ウチの娘に手を出した奴の顔など、見たくもない」

「お父さんなんて嫌いよ! 迅くん、一緒に逃げよう?」

「おい、さくら。待ちなさい。お父さんはまだ……」

「あなた、どうされましたか? 桜、どこいくの? あら迅くんまで」

「お父さんなんて、死んじゃえー」


 砂場で、バタバタと楽しげに、遊ぶ子供たちの演技を見ていると、少し悲しくなってきた。ってか、それ、何の影響だよ!


「パパ、私、逆上がりできたよ! 見た?」


 美鈴が私を呼んだが、心の中は、かき乱された。

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