へたくそ

静美しずみさんはどう思います?」


 女は男に相談しながら、とあるBarで酒を交わす。


「あの男は辞めとけ」

「何か知ってそうな口振りですけど」

「イヤ、俺はタダ……」

「俺はタダ? 何?」

「ゴホンッ……………………」


 男は一度咳払いをして改めて話し始めた。


「……………………君も噂は知ってるんじゃないのか?」

「噂? なんの話です?」

「まさか、知らないのか?」

「ええ、知りません。何のことですか?」

「じゃあ、教えてやるよ。沢尻は、ウチの社長、円堂久美子はわかるな?」

「ええ、知ってます。社長ですよね」

「ああ、その社長の犬なんだよ」

「犬って……。どういうことですか?」

「君も疎いな……」

「……どういう意味?」

「あの男は昔、台湾か何処かで犯罪を犯してウチに逃げてきたっていう噂もある。イケメンだが犯罪者。その犯罪者をウチの社長はある組から金積まれて、沢尻を買った」

「えっ?」

「もっと言えば、円堂久美子の性奴隷だ」

「って、どこでそんな情報……。ってか、静美さん、何者なの?」

「上に上がれば、そんな情報幾らでも手に入るよ。俺はこれでも本部の部長代理も兼務している。そんな情報は幾らでも手に入る。だから辞めとけ。沢尻よりもっとまともな奴は、この会社には、まだまだいる」

「へえ、例えば?」

「……………………」

「先輩はそうやっていつも女の子口説いてるんですか?」

「……ちがう。俺はタダ……」

「タダ何? 嘘の情報流して、相談乗ってるフリして、これからタクシーでも呼んでホテルとか行こうって腹?」

「………………」


 おい! 男……。図星かい。そこはうまくやれよ! ってか、女はわざわざ飲み会の後、相談するフリして、二人でBarに来てるんじゃないの? 口説くのも下手糞だよ。男……。


 ってか、どっちも下手ですよ(バーテンダー)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る