とあるレンタルショップ

 紳士淑女が集まる街の、雑踏としたビル街の一角に、レンタルショップがある。

 大手チェーン店とは違い、灯は薄暗く、いかにも夜の店っぽい雰囲気を醸し出している店だ。屋上はガレージになっており、地上二階のほぼ平家。十台あまりの駐車スペースがある。

 ある車が一台、屋上駐車スペースに止まった。若い男女二人が、屋上駐車場から、一階のレンタルスペースへと階段で降りてくる。

 薄暗い店内を見た瞬間、女は男に言葉をかけた。


「健ちゃん、ちょっと怪しくない? アダルトショップみたいに薄暗いっし、ウケる!」

「おお! そうだな。変なもん置いてそう。アハハハッ」


 店内入り口付近には、子供用のおもちゃ箱。ガチャガチャが数台並べてある。その上には、DVDなどのポスターが貼られ、自動ドアがある。自動ドアが開くと、男女はケタケタと笑いながら、店内へと入っていく。


 店内も薄暗いが、意外に広く、DVDやコミックコーナーなどが設けられており、DVDなどのパッケージが所狭しと並べてあった。奥には十八禁と書かれてあるアダルトコーナーも設置されていた。


 DVDのパッケージ数は、大手にも負けないほどの表紙パッケージが置かれていたが、店内には男女二人だけしか客はいなかった。


「ねえ、なんか面白そうなのある?」


 この街に来たばかりの男女は暇を持て余し、この店に訪れているのだろう。男女とも部屋着に近い格好で、草履を履いて店内に草履のペタペタと言う音が響いていた。


「なあんだ? この店? 知らねえタイトルが多くね?」

「ねえねえ、『Life or death』何このタイトル? 洋画? パッケージ写真もイケてないし、あんまり見たことないタイトルばっかりだね?」

「でも、こう言うのどう?」


 男は、ホラーコーナーのタイトルを指を刺し、『death on death』というタイトルを女に見せた。

「やあ、もう。こんなタイトルばっかじゃん! ねえ、エロも見てみない?」


 女は男に興味本位で、先ほど選んだ『Life or death』を持ちながら、十八禁コーナーに誘う。

 暖簾のれんくぐると、女性の下着姿や半裸状態のパッケージが、所狭しと並んでいた。


「ねえねえ、健ちゃん。好みの女優ってどんなの?」

「ええ、シラけること言うなよ。言えっかよ」

「いいじゃん、一緒に観ようよ?」


 女は男に興味本位で、十八禁コーナーのタイトル一つを手に取った。


「おいおい、それグロじゃん! 菜々美。そんなの興味あんの?」

「ちょっと面白そうじゃない?」

「おっまえ、結構スキもんだろう?それ、マニアだよ」


 男女が十八禁コーナーでDVDを閲覧している最中、一人の店員がDVDケースを並べにコーナーに入ってきた。そしてBARのバーテンダー風に、低い声で男女カップルに言う。


「いらっしゃいませ。当店へようこそ」


 その時だった。男女二人が立つ床が抜け落ち、男女二人はその場から地下へとストンッと落ちていった。悲鳴は聞こえることはなく、すぐに床は自動で閉じられた。


 翌朝近く……。


 ホラーコーナーには、新しく男女カップルのプロモ写真がパッケージとなったDVDタイトルが置かれていた。


『Life or deathⅡ=若き男女の悲鳴』というタイトルで……。

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