遊びの女

「私は、あなたの何だったのよ、答えなさいよ! じゅん!」


 あれだけ大切にされて、あれだけ一緒に楽しい日々を過ごしたはずなのに……。


 女は、潤に叫び続けた。潤は、女に見向きもせずに、立ち去ろうする。女は悔しくて、悲しくて、堪らずに叫び続けた。


「どういうつもりよ。また新しい女でも作るのね? そうでしょう?」


 女は叫んだが、その叫びは潤には届かなかったのか、潤と女との距離は更に広まった。潤もこの女の叫びが聞こえていないはずはないと女はタカを括っていた。だが、女の声は、潤の足を止めることは出来なかった。


「じゅーん! 何よ、あんた。私の事、遊びだったのね! 酷い、酷いわ」


 それでも、女の声は潤には届かなかった。一緒に歩く女が潤に声をかけた。


「ねえ、潤ちゃん? 潤ちゃんは、男の子なんだから、リカちゃん人形は卒業しないと、沙耶とはもう遊んであげないよ?」

「うん、僕、もう人形さんより、同じクラスの沙耶さやちゃんが好きだから、もう人形では遊ばない!」

「おぉ! 偉いなあ、パパもそうした方がいいと思うぞ? 沙耶ちゃんありがとうな? 潤と遊んでくれて」

「潤ちゃん、幼稚園でも人気者だよ? 潤しゃんのパパしゃん」

「そうか。引っ越してきて、沙耶ちゃんって言うお友達が出来て、潤、良かったな?」


 潤……。やっぱり私は、遊びの女だったのね? 悔しいわ。あれだけ仲良くしてくれていたのに。人間に負けるなんて! 人形辞めたいわ!


 リカは、ゴミ箱に捨てられて、そう思った。


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