大量出血死

 奴……。奴は、奴はどこへ行った?


 鋭い視線で辺りを見渡しながら、女は奴を追っていた。見つければ、絶対に返り討ちにして、殺してやると決めていた。

 だが、奴は中々現れない。女を陥れた奴は、再度女のこの滑るような火照った肌が気に入り舞い戻るはず。

 風呂上りのバスタオルを巻いた柔肌の脹脛ふくらはぎかゆみが治らない。


 居た!


「血を吸ったこの吸血鬼め!」


 女の血を吸い、遅速で飛ぶ奴を見つけ、女は両手、掌を奴にぶち当てた。大量出血で奴は無残にも女の掌で死に絶えていた。

 この蚊は、幾つもの人間を吸ったのか、赤く血みどろく掌を覆っていた。脹脛の痒みが度を増した瞬間でもあった。


この季節外れの、吸血鬼め!

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