ある男の日常
おい! そこのあんた! ちょっと聞いてくれ。
あんただよ! 名前は知らねーが、俺の話を少しだけ聞いてくれたら、いいことがあるかもよ?
俺の名前をまず言っておこうか。俺は
いつも乗る電車は、5両目の2番目の扉。朝のラッシュには程遠い生活を送っている。なんせ、ライターというものは、昼に起きて、グダグダと夕方にかけて調べ物をしたのち、夕方から夜にかけて、ツイッターなどやネットの情報を閲覧した後、書き始める。これが俺のスタイル。
そんな俺にも、ある秘密がある。実はこれから向かうところなんだが、これがなんとも、クライマックスシリーズが行われている球場でのある歌手のライブだ。このライブに来る観客は皆、奴のファンである。
奴とはボーカリスト
しかし、こいつには闇があり、ある売春組織の幹部だという情報が上がった。俺はそれを殲滅するために呼ばれた。
フッ…。話が唐突するぎって?当たり前だろ?俺はライターだぜ?そんじょそこらの展開で書くものかよ! って言ってはいるが、これは俺にとっての仕事。
バラしていいのかって? これはあんたには特別だよ。特別。
いいかい? これは俺にとって、日常の話をしているに過ぎない。今時流行らないハードボイルド小説みたいなことにはしないつもりだ。なんせ、これは俺にとっての日常だからだ。
俺は球場に向かうため、電車に乗る。もちろん5両目の2つ目の扉にだ。なぜかはわからないがこの扉が一番俺にとって落ち着く場所でもある。ギターケースには、スナイパー銃を忍ばせてだ。
球場に到着すると、開門されており、この球場内のファン総勢数万人のうち、今日も数十名は消えることになっているんだろうな。
いつもコイツらのライブの後は、数十人の女性が雲隠れのように消息不明になるっていう噂がネット上でも盛り上がっていた。
そんなゴシップ記事で、わざわざ警察が動くはずもなく、ただし、実際にその女性たちの消息は不明のままということだ。
警察は動かないが、俺は動いた。というよりも、これは裏稼業組織の仲間の情報によって明らかにされた。
俺たちは、ある売春組織の壊滅を狙っていたら、まんまとこのボーカリト譲のライブが根本にあるという情報を得たからだった。
今回は、俺がこの譲を始末する役という訳。
まあ堂々と打つわけにもいかず俺は電光掲示板のあるところに隠れて、奴の動向を逐一見張っていた。ライブが始まった。
熱狂的なファンが前方に押し寄せている。その最中に辺りを見渡すと、やはりだった。ファンの歓喜の悲鳴とは別の悲鳴が聞こえる。俺はこれでも聴力は人並み以上で、優れている。
しかもだ。仲間から連れ去り現場を目撃したとの情報。譲は何食わぬ顔をしてライブを始める。歓喜の声がこだまする球場内で、俺はスコープを覗いていた。
2時間のライブが終わると客が散り散りに会場を後にする。さあて、これから本番という訳だ。
俺は、麻酔の弾が入ったスナイパースコープから、譲が欲しがると思われる。女たちの背後から、銃弾を打ち込み気絶させる。
フッ…何をしたかって?そうさ? 俺もこの組織の一員だってことだ。歓喜の声で崩れ去る女どもを警備係に扮した組織の人間が連れ去るように、ある場所に匿う。それでいっちょあがり。
なあに簡単な仕事だ。
俺は単にスコープから狙い定めて打ち込むだけの話。
これで俺の年収も上々ってことだ。数十名の女どもに銃弾を撃ち込むと、俺はギターケースにスナイパー銃をしまい何食わぬ顔をして、球場を後にする。
狙われた女どもはどこに行くかは、知ったこっちゃねー。これが俺の日常でもあるんだからな。フッ…。言ったろ? 軽蔑してくれてもいいんだぜ? 今時流行らないハードボイルド小説などにはしないつもりだと…。
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