第27話.この世界。5

翌日、手斧と金槌を下げ干場に来ると。

男達が皆で丸太を割っていた。

「おう、来たな。悪いが日が高くなるまで割だ。半分に割れ。」

「あ、はい。」

握り拳2つの太さの丸太を半分に割る。

大仕事だ。

男達は身体胸板も腕も太い者が多い…。

時間が掛かるが手斧で半分に割る。

半分に割った丸太の山が出来る。

子供達が割った丸太を運んで干場に並べている…。

「よーし、無くなったもう良いだろう。」

最後の丸太が無くなった。

「大木が取れてた時期はもっと楽だったな。」

「最近は細いのしかねぇな。」

「おう、坊主、もっと喰え。力が無いぞ。」

手が遅いので野次られる。

「おい、そいつは技教えだ。こっちに来い教えてやる。」

「へーい大将。」「すげぇな。」「若いのに。」

「あ、はい。」

干場の大将に付いて行く。

「さて、ココは干場だ。赤泥と薪を干している、さっき割った木は赤泥焼きのヤツだ。この枝の太さが製炭用だ。」

枝打ちされた枝の葉を取って同じ長さにしている。

葉の種類で解る。

木炭用の木だ。

「固い木ですね?」

「ああそうだ、分かって居るならココは見るだけで良いだろう。さっきの赤泥焼きは固い木の必要は無い、よく乾燥させる事と泥を選ぶことだ。」

「はい。」

何処かで鉄を打つ音とは違う音が鳴る。

「さあ、早いが飯にしよう。付いて来い。薪割の飯は…。旨くは無いが精が付くぞ。」

「「「ハハハハハ。」」肉が入っているからな。」

笑う男たち。

黒い鉢を持っている。

木の鉢だが並ぶ…。

「おう、飯の大将。コイツは技教えの坊主だ。今日は肉を喰わせてやってくれ。」

大きな木の勺を持った男が無言でじろりと見る…。

「良いだろ今日は俺達と同じ仕事だ。」「力仕事は喰わねえと…。」

「…。そうか。沢山食べろ…。」

ぶっきら棒に鍋の中を掬い、木の鉢に山盛り注がれる。

白い粥…肉入りだ。

「さあ、喰おうぜ。」

零さないように持ち場に戻り、思い思いの場所に腰を下ろし食べ始める男達。

「飯食ったら次の大将のトコ行くからな。」

「はい!」

麦の粥に…味が付いてる。(塩味)

多分、鹿の肉だ。

思わずかきこむ。

「ゆっくり喰え」「喰わないと大きくならんぞ。」

ヤジが飛ぶ。

「ふぁはい!!」

食べ終わった後に木の鉢にお茶を注いでもらった。

「休憩が終わったら付いてこい。」

「はい!!」

付いた先は筏の茣蓙だった。

大勢の男達が壺の中に乾いた泥の塊を削ってた。

天秤棒の両方に壺が付いている。

「ほい、焼きの大将。」

「なんだ?干場の…。」

「コイツは技教えだ大将の所で使ってくれ。」

大きな体の男に紹介される。

「谷からやって来た、バリアンの子ダヤンです。」

「ほう、そうかい。何を教えればいいのかね?」

「はい。実は黒砂しか使った事が無いのです。泥の良し悪しをお願い致します。」

「コイツ自分で作ったナイフ持ってるそうだ。」

「へ―。そりゃ凄いね。通しかい?この歳で?」

「はい、父に一通り技を受けました。」

「よし、そう言う事なら歓迎だ。俺は焼きまでやる。赤砂焼きまでだ。教えてやる。ついて来い。」

「はい。」

「さて…。コレが乾燥した泥だ。解るか?ココから色が変わっているだろ。」

茣蓙の上の固まった泥塊一つ取りだす大将。

「ココは弾く無駄だ。必要な赤砂を削る。こんな感じだ。」

壺の上で手斧で赤い部分を削っていく。

細かくなった赤泥が壺に落ちる。

「はい…。」

「で、コレは要らない。」

色の薄い泥の塊を捨てる大将。

「昔はやらなかったが、最近は赤泥に泥が混じる。池の底は泥の下に赤泥がある事が多い。」

そうか…。

赤泥取りはあっと言う間に濁って手元が見えなくなるのだ…。

悪い泥はココで弾くのだろう。

「焼きは別の場所でやる。今は細かくする所だ。やれ。」

空の壺と泥の塊を渡された。

斧で削る。

削った後のを大将に見せる。

「うん、悪くない。所でコイツを見てくれ、コレが良い泥だ、全部使える。こういうのを底で探せ。」

時々、大将が泥塊を渡してくれる。

良い泥、悪い泥だ。

壺に赤い泥砂が溜まると…。

茣蓙の上の泥塊も無くなる。

しかし、量が減る。

あんなにあった泥がコレだけだ。

こんなに苦労するなら黒砂のほうが楽だろう…。

いや、父の話では普通に黒砂を集めるのが大変だそうだ。

黄金の不死の王が川の流れを操っているから出来る事なんだ…。

黄金の不死の王…。

物心ついた時から城の主で谷の支配者。

当たり前の様に生活していたが谷の外には支配者が居ない。

王は禁を出して谷の全てを支配している。

川の流れも雨も雷も…。

大木の村で笑われたので、そんな者は谷の外には居ない様子だ。

日が暮れる前に壺に入った赤土を天秤棒を担いで移動する。

ついた先は屋根だけの小屋がある。

周囲の地面は土ではない、石畳だ。

石畳は焼けた跡があり、灰はない。

綺麗に掃除してある様子だ。

屋根の下に運んできた壺を重ねて積み上げる。

肩の荷を下ろして空を見上げる。

もう、夕日が落ちて空が半分夜で半分明るい。

そう言えば谷の外は空が広いのだ。

「よし、遅くなったが今日はここまでにしよう。明日はたぶん天気が良い。焼きをやるから。朝飯食ったらココに来い。」

「はい、解りました。」

「明日も力仕事だからな。」

「はい!」

今日の仕事はこれで終わりだ…。

父から聞いて知って居るが。

見て無いとダメな事が多すぎる。

コレが世界を知ることなんだ。

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