第23話.この世界。1

「ダヤン。頼んだぞ。」

「はい、お父さん。」

お父さんと抱き合う。

お母さん達と弟妹が…。

家族全員が見守ってくれる…。

「ミラン、ヘリン、ルーラン、アリンも元気でね。」

「お母さんたちも…。お元気で…。」

「ダヤン、もしこの谷に戻って来れたら…。色々買い揃えてきてくれ。」

「はい、お父さん。きっと他の氏族の方もこの谷を気に入ると思います。」

出来ればこの谷に来てくれる兄弟が居ると良い。

「うん、黄金の不死の王さまは我々に良質な黒砂を齎してくれる…。手が増えればもっとナイフは作れる。」

「はい、兄弟が来てくれれば、きっと大剣が作れる様な炉が出来ます。」

「お兄…。俺、頑張って炉を作れるように成るから。」

「ソリャン…。風邪ひくなよ。」

「うん。」

「ダヤン…。出来ればヘポリの木の実を持ってきてね?」

「バリエ母さん…。ルシン姉さんが生きていれば…。」

「大丈夫よ黄金の不死の王さまが守って下さるわ…。でも谷から出たらオーガもゴブリンにも気を付けてね…。」

「はい。」

良く解らないがここゴブリン小鬼達は戦いを禁じているらしい。

谷の外では殺し合う事が普通だという。

「バリエ母さん大丈夫よ…。私、お姉さんの代わり務めて見せるから。」

一番歳の若いルーランが胸を張る。

「じゃあ、行って来ます。」

家族と別れ、南に向かう。

父と母の歌では南に谷の出口が有るらしい。

森の茂みを抜けると湖が出た。

遥か遠くに不死の王の城が見える。

「あれの向こうなんだよね…。」

「うん。」

「遠いわー。」

「さて…。水筒は?」

「未だいっぱい有るわ…。」

「先を急ごう。」

「「うん」」

僕達はこの黄金の不死の王の谷で生まれて育った。

成人して、家族を求めて市場へ向うのだ。

一家で作った道具を持って。

ソコで、欲しい物を揃えて、他の氏族と家族の誓をする。

他の氏族の兄妹と出会い、兄弟の誓を行い。

姉妹花嫁を交換し合うのだ。

そして、赤泥を求めて彷徨う。

鉄器を作るために…。

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