第20話:侵入者6

あれから鬼女は谷の奥へと進んで行った。

移動しながら食料を獲っている。

鬼女に襲われるのはガ三ラス星人で二日に一回、一ガ三ラスを襲って食べている。

この程度だとガ三ラス星人は減らない。

鬼女は火を使わない。

鬼女が増えると…。

ガ三ラス星人に取って生存の脅威に成るだろう。

「まあ、良いだろう。鬼女は増えないのだ…。」

まさか牝の姿なのに単性生殖じゃないだろう。

谷をうろつく鬼女。

一番北まで進むと…。

ダム本体で行き止まりだと理解した様子だ。

うろつき、出口を探している様子だ。

その割には人工物に興味を示さない、避けている節もある。

ガ三ラス星人は広範囲に分布しているので、エサにも困っていない様子だ。

「まあ、コイツは良いか…。何かの拍子で死んだらアンデットの材料にしてやろう。」

少なくともガ三ラス星人よりは強い。


朝日と共に日課の石の兵を作る。

今日は工廠で蜘蛛のゴーレムを製造中だ。

製造中に、いきなり警告音と共に南のダムの映像が立ち上がった。

「なに!人影だと!」

製造作業をしながら映像を眺める…。

シルエットクイズだ。

「ああ、鬼女か…。」

角が見える。

人影シルエットが堰堤を登り始める。

「随分と速足だな…。急いで作るか。」

ガ三ラス星人も、ダークエルフも慎重にダムを越えた物だ…。

完成した蜘蛛ゴーレムに自己診断と待機の命令を出して急いで玉座の間に戻る。

ダムの監視映像を立ち上げる。

「うん?ワンレンじゃない?」

驚いた、パンツしか履いてないだと…。

堰堤を乗り切った者は…。

「おお、鬼男だ…。只の鬼だな。」

鬼のパンツは革の腰巻に丸太こん棒を下げている。

きっと強いぞ。

「鬼女とあまり大きさが変わらんな…。」

別モニターに堰堤を越えた時の鬼女の映像と重ねる。

男女で個体の大きさが変わらないのか。

進む鬼男は、立ち止まり。

いきなり方向を変えた。

「うん?何か…。あるのか?」

周囲のMAPを出す。

進行方向には特に何もいない。

速足の鬼…。

鬼女がガ三ラス星人と戦闘した場所で立ち止まる…。

「コイツは…。」

方向を変える鬼…。

嘗ての鬼女食事所の近くまで進んだ、痕跡はもう既に分解者のスライムさんに分解されているハズだ…。

鬼女の映像を早送りして…。

鬼が同じ方向に進んだ。

「鬼女を追跡している…。だと?」

鬼女は風上10Kmのガ三ラス星人を発見した…。

ならば、鬼も鼻が良いハズだ。

もしくは鬼女の匂いを辿って。

「臭いのか鬼女?確かに水浴びしていないが…。」

ガ三ラス星人やダークエルフは綺麗好きだ。

特にダークエルフの映像フォルダは豊富にある。

「だが…。鬼の男女が遭遇するまで…。数日かかるな。」

追跡の鬼、鬼女は未だ存在に気が付いて居ない。

「いや、まて…。鬼女は出口を探しているのでは?」

谷の外周が見える位置を移動している…。

餌を求めるなら、中央を進めば良い。

そう言えば北のダムへ進む時は平野の西側寄りを移動していた。

「まあ、男女の出会いは中々起きない物だ…。」

しばらく観察しておこう…。


次の日の昼、AV(アニマルビデオ)の鑑賞中にいきなり警告音と共に南のダムの映像が立ち上がった。

「なんだ…また鬼か。」

連続の鬼である。

シルエットクイズで正解だ。

迷いなく堰堤を駆け上る鬼…。

「ん?なんかコイツ…。デカいぞ?」

鬼女と鬼1の画像を重ねる…。

「うむ!一回りデカい…。頭一つ分はデカい…。」

鬼2は速足で…。

鬼1を追いかけている様子だ。

多分、匂いと足跡だろう。

「さて…。どちらが先に鬼女と出会うかな?」

楽しみが増えた。

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