第18話:侵入者4
「ガ三ラス星人が増えない…。」
今日も支配地域の映像のザッピングで朝が始まる。
ダークエルフ達は旺盛な性欲で里の中を子供達が走り回っているのに。
平和民族。ガ三ラス星人さんは過酷な環境でなかなか増えない。
栄養失調で死ぬ幼生を泣きながら埋める母体を何度も見た…。
何も心は痛まない…。
だが。
「やはり農耕の技術が無いのが痛いのか…。」
ダークエルフは草原で焼き畑を行っている。
耕作物は豆とかぼちゃだ…。
元々、この大地は栄養価が低い。
元が砂漠なので仕方がない。
雷による窒素酸化物を供給しても肝心な大地に有機堆積物の層が薄いのだ。
つまり耕作するには
だが、希望はある。
ダークエルフが捨てたカボチャの種が森で自生し始めた。
鹿が夜間に畑でかぼちゃを盗み食いした。
種がうんこで運ばれ谷の中にカボチャが広がる…。
それより広く、畑で鳥が豆を食べて遠くに運び未消化の種がうんこで広がる。
良いぞ!窒素酸化微生物が広がる!!
萌だ萌え!!
全ては動物の食性行動により種子の移動がうんこで拡散するのだ!!
恐るべし!!運子!
「うんこは運ばれる物なのだ…。」
荒野にうんこ!
食ったら出ます。
これ、来ます。
「だが、この種子植物は…。」
鳥の
正直、賭けだ。
場所によって豆の勢いが強すぎて他の植物を駆逐している…。
他の植物の生育に悪影響だ…。
鳥のうんこで運ばれた豆は発芽した場所の条件による。
栄養状態が悪い場所では発芽しても成果しない…。
条件が悪いと花が少ない、咲いても種子に成らない。
痩せた土地では一世代で終わりだ。
窒素酸化菌を含んだ根を抱いたまま枯れて腐ってゆく。
自ら運んだ細菌によって分解され土に返る。
「コレが、この世界の植物の生存戦略か…。」
その為に、成果した豆植物は大量の種子を作って鳥に喰われるのを待っている…。
谷の中に豆の群生地が増えているので。
豆は今の所、賭けに勝っていると言っても良い。
一方、かぼちゃの種は運子で遠くに運ばれて、発芽した場所でマント群生を行う。
大地を広く茎と葉が茂るが。
草食動物(たぶん鹿とウサギ、ネズミ)が、葉っぱを好んでモリモリ食べ。
モリモリ増えて、モリモリうんこに変えている…。
ソレを分解者達が分解して谷は急速に有機堆積物の層を増やしている。
この、かぼちゃはどうやら、多年草の様子で、初めの年と条件の良い年しか結果しない様子だ…。
実を好んで喰う動物が居るので、種は広範囲に広がっていく。
草食動物はデンプンを欲している…。
草食動物は腸内にセルロース分解菌を保有して糖分を作っているのだ。
マント群生で太陽の光を独占したぼちゃの葉は二酸化炭素と窒素とリン、カリウムで勢力を伸ばしている。
谷は長い月日を掛け、豊かな土壌の層を育む…。
デンプン豊富なかぼちゃの実は特に好まれ動物たちに食べられ種子を運んでいる。
やがて、この谷はかぼちゃに占有されるだろう…。
かぼちゃと豆でこの谷の動物達は劇的に栄養状態が改善される。
この谷は、侵略植物により豊かな生態系を獲たのだ…。
だが、しかし。
「うーむ、未だガ三ラス星人はコレを食い物だと認識していない…。」
荒野に自生したかぼちゃの実に何も興味を示さない。
「豆は仕方がない。」
高確率で毒がある、生食できない。
鳥以外喰っているのを見たことがない。
ダークエルフは火を持っている。
加熱すれば豆は喰えるのだ。
「かぼちゃは鹿が喰えるのだから哺乳類は生でも食えると思うが…。」
たしか、観賞用のかぼちゃは毒がある品種もあると聞いた…。
今日も本日の猟果を並べるガ三ラス星人達。
炭水化物が足りてない。
一番大きな集団だ。
これから日課のお祈りが始まるのだ…。
「そうだな。コレを利用するか…。」
翌日、石の兵を操作してかぼちゃの実を二個採取した。
大きく熟した物だ。
かぼちゃの自生地はMAPで把握している。
石の兵はガ三ラス星人の集落へと向かう。
あまり、こちらから関わる必要も無いが。
お祈りが始まるまでに間に合うように急ぐ。
ガ三ラス星人は未だ儀式の準備に掛かっていない。
集落に近づくと…。
流石にガ三ラス星人達が騒ぎ出す。
正面の門を守る戦士クラスの集団は石の兵の進路を遮る事無く驚いた顔で動けない。
「いいぞ…。敵と認識されていない。」
居住区画を越え、中央の広場…。監視塔の前まで進む。
食材を並べる定位置、本日の主食の場にかぼちゃを置いた。
驚いた顔で立っているガ三ラス・リーダー…。
結構、歳を取った個体だ。
遠巻きに眺めるガ三ラス星人達を無視して、来た道を戻る…。
「コレでガ三ラス星人はこの成果物を食品と認識する筈だ…。」
喰い物を並べる位置に置いてやったのだ。
監視塔の映像でガ三ラス星人達は困惑しながらも日課の御祈りを始めた。
終わった後、皆が見守る中、ガ三ラス・リーダーは恐る恐るかぼちゃを調べ…。
一口齧った。
「良いぞガ三ラス星人!」
渋い顔のガ三ラス・リーダー…。
「皮は渋いのか…。加熱しないからな。」
そう言えばこの世界に来て何も食べていない…。
味と言う物を忘れていた…。
だが、デンプンは生物に取って甘いと感じるハズだ。
二口めを咀嚼している途中で表情が変わった…。
頷きながら戦士階級のガ三ラス星人に進めている…。
ガ三ラス戦士がかぼちゃを割った…。
種が落ちる。
破片を口に含むガ三ラス戦士…。
咀嚼しながら頷いている。
「よし!コレで喰い物と認識したぞ!」
後は情報の伝播が起こればガ三ラス星人の恒久的食料として認識するだろう…。
かぼちゃは保存も効く、何と言っても種と発芽の関係を知れば原始的な農耕が起きる。
農耕は道具の発達を促し、土地所有の概念が発生して貧富の格差を生む。
ソレは戦争の火種に成ってゆくのだ…。
「良いぞガ三ラス星人!闘争と文明の扉を開くのだ。」
等しく分け与えたガ三ラス星人はデンプンの甘味を知り。
その日から、収穫物の中にかぼちゃが含まれる様になった。
そして、ガ三ラス星人は、かぼちゃの収穫を毎日、一人一個を厳守し続け。
急速に周囲にかぼちゃの群生地を増やしていった…。
そうだ!うんこによって!
毎日、山となったかぼちゃを並べるガ三ラス星人達…。
獲り過ぎないので、持続的にかぼちゃを収穫できる状態だ!!
「ふうー、やはりガ三ラス星人は…。平等の精神を持っている…。宗教か…。家族意識があるのか…。」
良いことだ、安易に争いを選択しない自尊心があるのだ。
「まあ良い。かぼちゃの収穫量は増えている…。人口は増えているのだ。その内何か起きるだろ。」
彼らの平和は自らの意思で守られたのだ。
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