第17話:ダークエルフ3

あれから月日が経ちダークエルフ達は、やっと家を作り始め。

草原で焼き畑を行った。

家は木で骨組みを作り草を編んで出来ている。

おそらく中に囲炉裏がある様子だ。

毎朝、屋根から煙が出ている。

ダークエルフの耕作物は豆とカボチャだった。

多分カボチャだ…。

形からすると瓢箪に見える。

でもカボチャだ。

合間に製鉄も行っている。

相変わらず、ダークエルフ達の素行は悪い。

糞便を投げ捨て、木を切り倒す。

そのままだ。

「まあ、移動する生活を続けてきたのだから仕方がないと諦めても良い。」

天井に向かって呟く…。

だが、俺の谷では好き勝手はさせん。

『というわけで、ダークエルフさんの家の前まで来てみました。』

と言っても石の兵を操作しているだけだ。

突撃寝起きドッキリ企画だ。

もう既に、ダークエルフの生活パターンは把握済み。

日の出で一番に男が家を出る。

玄関で捕まえて説教してやる!

「sdljfsdj」

来たな。

空は明るくなったが大地は暗い。

あくびをしながらダークエルの男が出てきた、初めて近くで見たが石の兵より少し低い程度だ。

『オイ!コラ。貴様。』

出てきた男に背中から両手で肩を抑える。

意外と背が高かったなダークエルフ。

「うわ!だだだだだ誰だ!!」

驚く男。

肩幅は広いがひょろガリだ。

『俺はココの責任者だ!』

「え?誰!!せき…何?」

男を振り向かせ対面にする。

俺を見上げて恐怖の表情だ。

それより、責任者で通じないか…。

『俺はこの谷の支配者で、今お前とは我が兵を通して会話している。』

「へ!支配者!」

『そうだ、俺はあの塔の中で直接お前に語り掛けている。』

あなたの脳に直接語り掛けているのだ!

「塔の支配者!黄金の不死の王さま!ななな、なんの御用で!」

なんか焼肉のたれ見たいな言い方だな。

『まあ。俺をそう呼ぶのは良いだろう…。貴様らのやってきたコトはすべて見てきた。鉄を作っているのだな?』

パンパンもです。

「はあ…。そうです。」

『ココで製鉄をする事を許そう。但し!木を切る事は許さん。』

「そ、そんな!炭が無ければ製鉄はできません!」

『それは、知っている。だから貸す。』

「か、貸す?」

『コレからは切った分、木を植えろ。』

「木を植える!何のために?」

『お前ら製鉄で木を伐り始めてから森が無くなったぞ!俺が育てた萌えをだ!!』

「も、萌え?」

『お前らココで増える心算だろう、そして森が無くなったら移動する。いや、鉄が取れなく成る方が先かもしれん。』

「はい、そうですが…。」

『だから、木を伐った分植えろ。そうすれば川から砂鉄を取る事を許可しよう。』

「え?」

『別に何の木でも構わん、喰える実の成る木でも何でも良い、森を元に戻せ。』

「そんなことしなくても…、しばらくすれば森に戻ると思いますが…。」

まあ、そうだろうな。

おまえダークエルフの中ではそうだろう。

数十年すれば森は元に戻り、湖底の鉄バクテリア堆積層も復活する。

だが許さん。

『ここは俺の物だ!』

「はい!黄金の不死の王さま。」

『そして、お前等は俺の持ち物を喰って生活している。俺の物だ!!』

俺が法律だ!!

「はい!感謝しております。黄金の不死の王さま。」

『よろしい、この地で製鉄を行う事を許そう。日々の糧に感謝せよ。』

「しかし、砂鉄は…。」

『恐らく千年位だ。音を鳴らして知らせてやる。川に洪水を起こして砂鉄を供給してやろう。』

「そんなことが出来るのですか!」

『俺はこの谷の支配者だ!』

ダム管理は俺の仕事だぜ!

「は、申し訳ございません。」

『後は、そうだな。お前ら糞便を投げ捨てている、コレを止めろ。』

「え?しかし。食べたら出る物です。」

『別にするなとは言ってない。場所を決めて穴を掘ってソコでやれ。最良なのは、壺に灰を入れてやれ。溜まったら森に穴掘ってすてろ。移動中の小便は仕方がないが、大便は穴掘って埋めろ。無理なら土を被せろ。』

「すごい手間なんですが…。」

『どうせ増えれば糞便の量も増える。手が増えれば楽になる。くれぐれも川に流したり、湖に捨てるようなコトをするな。解ったか!!』

「は、はい!」

『よし、俺の目は何処にでもある、この谷の全てを知っている。徹底しろ!』

騒ぎでダークエルフの女達が家の中から外を伺っている。

あ、腹が大きくなっている個体がある。

ダークエルフは繁殖している。

「解りました、黄金の不死の王さま…。」

『では、俺は帰る。』

ダークエルフの男を開放して、近くの丘に向かい。

石の椅子を出して腰かけた。

コレでダークエルフの里を監視できる。

ダークエルフ達は家が出来たら外でパンパンしなくなった…。

川辺でパンパンはしているが、アングルに凝れないので観測点を増やすのだ。


こうしてダークエルフ達は俺の言ったことを守り。

木を植え、糞便用の土器を作り、トイレを作って森に穴掘って捨て始めた。


俺の谷の衛生環境は守られた!!

映像接続を切り、玉座の間で天井を見て思い出す。


「そういえば異世界に来て初めて会話らしい会話だったな…。説教だったと言うのは残念だが。」

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