第15話:ダークエルフ1
北に向かうダークエルフ達は、草原を進んだ。
途中、狼の群れと遭遇したが、弓矢と短剣で撃退している。
やはり、鉄器は偉大だ。
だが素行が悪い。
獲った狼を食べる様な事はしない。
皮は獲って身はその場で放置だ。
糞便も放置。
ポイ捨ても止めない。
「コイツ等、移動している内は良いが定住したらどうする心算だ?」
数が増えたら環境衛生が悪化するだろう。
まだ、水饅頭が分解してくれる内は良い。
昨今、鹿が頭数を増やしたが、糞に悩ませることは無い。
恐らく、糞虫が草原に定着した筈だ。
「甲虫は飛んで移動して来るからな…。果たしてこの世界の糞中が甲虫なのかは不明だ。」
奈良公園の鹿の糞の8割は糞虫が分解しているという話だ。
意外とココでは水饅頭が分解しているのかもしれない。
後、何故か木が生い茂る場所を避けている。
地下道水路が有る場所は性質上、植物の育成が速い。
ほんの数年の差だが、木が茂って林の帯が出来ている。
その為、木の帯が川から伸びるように湖に繋がっている。
遮水壁が有る場所も同じだ。
ココは地下水位が高いため、森の帯が出来ている。
「遠距離武器が主体のダークエルフは森は危険なのか?」
少なくとも熊が出る。
鹿や獲物を追っているのかもしれない。
草原と森では草食動物の密度が違う、食糧になる草の総量が段違いだ。
実際、鹿を草原で発見したときも、弓で攻撃しようとしていた。
遭遇戦に成らずに鹿が逃げたので残念そうな顔をしていた。
なお、今の所、ウサギが主食だ。
「まあ、熊に勝てるかどうか?がこの草原で定着する事が出来る分かれ目だな。」
何せ個体数が少なすぎる。
繁殖するにも遺伝子プールが少なすぎ。
劣勢遺伝子を排除する方法が無い。
「まさか、突然変異を排除する能力が有るんじゃない無いよな?」
近親交配ドンと来い。
特に、進化の過程で…。
適用できない生物は絶滅だ。
神は言っていた…。自然環境に負けて低位に落ちてしまうと…。
「面白そうだから、もう少し見てみよう。」
素行が悪ければ又、ガ三ラス星人さんが怒るだろう。
森を避けた為に湖に出た。
この湖は水深が低いので魚の繁殖が悪い。
湖面を見て喜ぶダークエルフ達。
着衣を脱いだ男が慎重に水の中に入り、又出てきた。
皆で集まり、掌を広げて何かを確認している。
首を振るダークエルフ達。
「湖底の…。泥を採取している…。」
何か拾う物は有るのか?
「湖の底は全て遮水層代りの石畳だ…。その上に石と礫層が有るだけだ…。」
水生生物の繁殖の為とバイオフィルム生成を狙っての湖底だ。
バクテリアや、ミジンコさんは水鳥が運んできてくれる。(主にうんことして。)
川から水生生物や水草を運ぶのは夜間にゴーレム達がやっている。(牽引式スクレーパで重いコンダラ運び。)
彼らが拾っているのは、湖底の泥だ。
生物の死骸の体積有機物だ。
「ナニを探してるんだ?」
落胆したダークエルフ達は又、湖畔でキャンプだ。
流石に夜間は交代で見張りを立てている。
無論、交代でパコパコもしていた。●REC
それから日数が経ち、俺の
ダークエルフ達は、湖底の泥を探すために幾つかの湖を巡っていた。
珍しく、河川の淵の畔に付いた。
元々、ダークエルフ達は川に興味を示さなかった。
乾季には風が強い時期が有ったので出来た砂地を川が呑み込み蛇行し始めている。
常時、安定した水量が流れる様に成った為、起き始めた事だ。
その為、淵や河畔砂丘が出来つつ有る。
中継器の台座を深く作って置いて良かった事例だ。
人工湖なんて要らんかったんや…。
「いやいや、人工湖は日中気温差と湿度とガ三ラス星人さん達の生活の糧として必要だったのだ…。」
水中の泳ぐ魚や、水鳥映像は何と言って面白い。
心の癒しだ。
淵に入るダークエルフの男、女達は弓を構えて周囲を伺っている。
何時もの様に底の泥を掴んで出てきた。
慎重に皆で掌を探っている…。
喜び踊るダークエルフ達、何時もと違う反応だ。
「お目当ての物が見つかったのか?」
一体ナニを探して居たんだ?
不明だ。
しかし握った物はその場に捨ててしまった。
周囲の捜索に入った。
「何かを探して要る…。」
一番近い森と淵の中間…、丘と言うほど高くない場所にキャンプ地を決定した様子だ。
「同じような条件の丘は有ったが河川に近いほうにしたのか…。やはり水の底で何かを探していたのか…。」
一晩終えた、翌朝。●REC
ダークエルフ達はキャンプ地を撤収せずに。
森に向かい、木を切り始めた。
森林伐採だ。
元々樹齢は高くない。
その為、幹の直径は20cm以下だ。
斧での伐採はそんなに苦労は無いハズだ。
倒した木をそのまま、草原に並べる所で作業を止め。
全員、草原の草を刈って日が落ちる前にキャンプ地に戻ってきた。
藁のベッドの替わりだろうか?
次の日は猟に出る組と川岸で土を集める組で別れた。
「壷を作っている…。」
壷だけでは無い、皿も鉢も作っている。
「ココに定着するつもりか…。」
狩猟組が帰ってくるまでに食器類を完成させたこねこね組は。
土器の天日干しの間に、刈った草を組んで壁を作っている。
壁と言うには雑だ。
風除け程度には成るだろう。
出来たものは、住居と言うには粗末だ、毛布の天幕に草の壁、獲った狼の皮を敷いている。
「くそっ!監視方向が…。望遠距離が!!アングルに凝れないだろ!」
最近
猟果を喜ぶダークエルフ達。
剥いだ皮を吊るして焚き木を囲み、作った泥壷を離れた所に並べて焼いた鹿肉を腹いっぱい食べている。
ソレでも数日分の食料に成るだろう。
「恐らく…。土器は乾燥中だな。」
いきなり焼くと割れるハズだ。
時々、女が回転させている。
遠火に当て、ムラ無く乾燥させているのだ。
樵と草原の草を刈る毎日のダークエルフ達。
切った木は草原に並べ、刈っている草は干している。
干した草は一部を燃料に使っているが、大部分は天日干しだ。
何となく意味が解ってきた。
草原の草を刈る列が折れ曲がった。
幅は変わっていない。
四角く囲む様だ。
だが今日は朝から違う動きだ。
消えた焚き火の痕を片付け、初期に切り倒した木の枝を落として運んで来た。
運んだ枝は斧で更に落としている…。
「何をする気だ?草原は焼畑をする気なのか…。」
焚き木の後の灰は捨てずに小山に成っている。
綺麗になった焚き木後に草を置いて乾燥した土器を並べ始めた…。
「ああ、土器を焼く気か…。」
どうやら本気で定着する気の様子だ。
枯れた木の枝と葉を被せ始めた。
小山に成った所に練った土を被せて土饅頭になる。
「縄文式では無く弥生式か…。」
切った木を草原に並べているのは、乾燥させる為だとしても大量だ。
「始めは住居を作る為だと思ったのだが…。」
作っているのは人の頭ほどの壷や皿だ。
アレほど大量に木は必要ない。
雄のダークエルフが土饅頭に点火すると煙りを囲んで全員が干草で縄を編み始めた。
「やっと住居を作る気か…。」
草で茣蓙か筵の様な物を作っている…。
随分と手馴れている。
干草がどんどん減ってゆく。
日が落ちる前に大量の茣蓙が出来た。
食事が終わり…。
流石に疲れたのか、そのまま毛布に包まり眠ってしまった。
土饅頭は燃え尽きたが、未だ煙を上げているので暖かいのだろう。
「茣蓙は早速使わないのか…。そういえば叩いてないな…。」
繊維が堅くてマットに使えないだろう。
次の日の朝に雄が土饅頭を崩して中から素焼きの壷や鉢、皿を取り出している。
一つづつ取り出しチェックする雌達…。
出来栄えで二つに分けている。
納得したのか、総出で川に向かい、身体を洗い。●REC
出来上がったばかりの壷に水を貯めて帰って来た。
雄が壷の水を地面に注ぎ土を練り始めた。
雌は灰の小山に水を少しずつ注ぎ練っている…ラーメンの麺を練る要領だ。
残りの雌は斧を持って草原に向かった。
燃料の確保だろう。
雄は残り少なくなった干草を練った土に入れてブロックを作り土管を作っている。
下に穴が開いているので何となく解る、炉だ。
「あー、釉薬か…。」
草木で釉薬を掛ける気だ。
「随分とガ三ラス星人より進んでいるな…。まあ、火を使っている時点で…。」
鉄器を使っている時点で炉の知識は有るだろう。
しかし、未だ家を作らないのは不思議だ。
基本的に放浪する生活なのだろうか?
釉薬が掛かった鉢や皿が白く茣蓙の上で乾燥されている。
運んで来た枝を土饅頭跡地に組んでいる。
特にコレは何でもない。
毎回のキャンプファイヤーだ。
完成後は全員で川に洗濯と水浴びをしてパンパンしている。●REC
しかし、コイツ等元気だな…。
いきり立つ物も無いので、特に何も思わない。水がめを担いで戻ったダークエルフ達はキャンプファイヤーに火を付け暖を取り食事を始めた。
日没が近いのでコレで今日はコレで終わりだろう。
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