第12話:侵入者2

さて、ノルマが終わると、玉座に座り映像を見る。

有り余る時間の一部を使って、ガ三ラス星人達の生態に付いていろいろと考察した。

先ずコイツ等は群れで移動しながら生活している。

農耕は行わない。

火を使うことを知らない。

鉄器は所持していない。

道具を作るが木と磨製石器だ。

雌と思われる個体が、何かを編んでいるのは見て取れた。

着衣は獣の皮を加工している。

家を作る事はしないが、草や木の皮を使いロープを作っている。

草木を編んでタープの様な物を作って居るが、移動する時は廃棄しているので財産と言う認識は無い様子だ。

主食は魚と木の実で、若葉も食べていた。

鹿や水鳥も食べるので基本的には肉食かもしれない。

雌の固体は木の実や草木の若葉を採取して

雄の固体は狩りを行って居る。

狩猟方法は魚と水鳥は巣潜りの様子だ。

鹿は草原での待ち伏せと巻き狩りで槍や石を投げている。

返り討ちに合っている個体も居た。

草原で狼と生存競争を繰り広げている。

(投石で対抗している)

宗教観はある様子で死んだ個体は埋葬している。

最近は中継器やゴーレムを崇めている様子だ。

「ふむ…。この世界の人類はもう少し進んでいるかと思ったのだが…。」

言葉は不明で、ナニを考えているのかも不明だ。

大人はゴーレムに触れない。

好奇心が有る子供が触れる事が有るが、映像に一度驚くと二度と触れる事は無い。

その為、城には何も興味を示さない。

恐れている様子だ。

親が子に言い含めているのだろう。

「そういう意味では社会性がある生物なのだ。」

試しに蜘蛛型ゴーレムをガ三ラス星人に見える距離で通過させてみた。

通過するまで、固まって驚いている様子だったが。

逃げることも追いかける事もしなかったので恐らくコチラに害意は持っていない。

俺の活動を邪魔する気は無い様子だ。

「増えて財産を持つ様に成れば解らんか…。」

先は長そうだ…。


20回ほど冬と乾季が終わり。

北のダム本体の完成が近づいた。

ガミラス星人達も順調に固体を増やしている。

群れの分派も起きて4つの集団がこの盆地に居る。

意外に増えなかった。

理由は、この盆地の生態系のトップは熊だ。

ガ三ラス星人達は熊との戦いで負け続けている。

群れの中の戦闘を行う個体が減ると狼に負け、集団が消滅する…。(全滅か、運が良いと他の集団に吸収される)

一方、狼の集団は熊を倒す事がある。(狼は戦況が悪くなると逃げるので負けても被害は少ない。)

ガ三ラス星人は狼を倒す場合もある。(人類作戦勝ち、狼が逃げる。)

過酷な異世界だ。

「人類には未だ速過ぎるな…。まあ、火を使わない生き物はそんな物か。」

ガ三ラス星人達は集団同士の戦いは起きない様子で、話し合いか、何らかの決着手段で雄同士の素手のケンカは見た殺し合いまで発展していない。

「図体はデカイが心優しい人類の様子だ…。」

良い事だが、同族同士の闘争が無いので武器の発展が遅れて霊長類に成れてない。

「ふーむ。まあ良いか。特に何もしないようにしよう。」

彼等はそれなりに幸福なのだ…。

無理に生存競争を強いる事も無いだろう。

実際、乾季に人工降雨飛行機械を打ち上げても、何も反応は無かった。

始めは、空に登る散布固定翼機グライダーを見ても何も反応しなかった。

青い空に広がる液体空気の飛行機雲を指差し恐れおののいたが、レーザーを当て雨が降り、雷が起きると。

その場で全ての個体が土下座したので、俺が何かやって雨を降らせたと言うのは理解している様子だ。

なお、平野の地下水位を見ながらの人工降雨なのでやらない年も有った。

その年は草木の生長が悪かったので、”恐らくレーザー避雷針による放電で窒素酸化物を作っている”と仮説を立て。

次の年はレーザーで落雷フィーバーした。

お陰で大地が豊かに成った。

ガ三ラス星人達がガクブルしていたが…。まあ良いだろう。

最近は、中継器からの映像が木々に遮られ始めた…。

人工湖も藻が増えて魚が増えた。


今は、日が出ると全てのガ三ラス星人達は塔に向かってお祈りを始めている。

塔自体には怖がって近づかない。

恐らく方位を知るためのランドマークに使っている様子だ。

群れから離れ、道に迷った個体が堀の前(水が溜まった)まで来たことは有った。

(ゴーレムを動かし、群れの方向を教えたが無事に合流できた。)

彼らは相変わらず移動しながら生活しているが。

最近、一番大きな群れが南の人工湖の一つに定住した。

比較的早く魚が定着した湖の一つだ。

人工湖の中に魚の繁殖を見るための中継所が建っているので彼らの生活は良く解る。

木を切り倒し、草を載せ竪穴式住居を作っている、茅葺屋根だ。

未だ火を使っていない。

狼や熊から身を守るために柵と堀を作った。

何故か歪な星型だ。

木で筏を作って漁を始めている。

その内、魚の保存法も考案して貯蔵庫が出来て、財産の概念が出来るだろう。

良いぞ王国の起こりだ。

リーダー格が出てくるのは時間の問題だ。

夜中にこっそりゴーレムを使って人工湖に魚を放流していた甲斐が有った。

全ての人工湖に魚を移殖するのだ。

放流は簡単だったが、人工湖の水深が浅い物はやはり冬季の温度差による湖底の水循環が起きないので繁殖がイマイチだった。

(湖底にゴーレムを沈めて定点観測した。)

その他は、個体調査の為、岩塩ブロックを中継器の前に置いて鹿が舐めにくる数を調べた。

「順調に個体の数は増えている…。まあ、人類が少ないのは仕方が無い。」

人類萌え、頑張れハーレム。

強力な個体を作って熊を倒せ。

「そうだ、霊長類を目指すのだ…。フハハハ」

『CAUTION!未確認生物が接近しています。』

「ファッ!!」

いきなり警報だ、感知した中継器からの映像が並ぶ。

「鳥か?飛行機か?」

いや…。空飛ぶトカゲだ…。

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