第11話:侵入者1
草木は順調に萌えて盆地を覆いつくした。
平野は草原に成った。
草原には何時の間にかウサギが居た。
ウサギかどうか不明だが、小型草食動物だ(ツノがある)。
虫と小魚を食べるデカイネズミも居るが水辺に穴を掘るので少々困る。
コイツ等は南からダムを越えてやって来た様子だ。
順調に定着して数を増やしている。
後は山を越えてやって来た生物達、始め数頭しか見なかったが。
鹿の様なヤギの様な謎生物が10匹程度の群れで走り廻り。
ソレを数匹程度の狼の集団が襲っている。
熊(ツノがある)も数頭程度…。
俺の支配地域が野生の王国と化している。
草を食べるが、木を食べる生物は居ないの様なので、木は順調に伸びている。
このままだと中継器の高さを越えるのも時間の問題だ。
距離測定と監視が出来なく成るので困る。
だが、もう既に詳細な地図は出来ているので必要性も少ない。
河川と人工湖は一年中水を湛えている。
乾季には水位は下がるが地下水は安定している。
その為、渡り鳥の中継地に成っている、時期により水鳥が増える。
通年、人工湖に水が溜まると、怠け者の水鳥がココで
溜鳥だ、少々困る。(理由は後ほど…。)
上流のダムは堰堤本体工事は進み、遂に地面から上に出始めた。
完成した暁には貯水機能で水位が一定化する。
試験貯水が待ち遠しい。
未だ先だ。
俺の工程表に狂いは無い。
さて、毎日の日課は朝日を見て今日の天気を予想する。
大概は晴れだ。
朝霧が出るようになったので嬉しい。
木々が根から地下水を汲み上げ、葉から水蒸気を放出しているのだ。
塔の外、城門内の地下工廠で
気分が乗りすぎて作りすぎてしまう時もある。(翌日は休み。)
ゴーレム建造が終わると最下層の玉座で進捗状況を確認する。
基礎岩盤までの掘削が終わりダム本体の基礎部が終わりつつある。
後は岩を積み上げるダケだ。
「ダム端部は造成アバットメント工法にしたかったが…。」
結局端部は岩盤まで堀下げた。
谷が狭いので出来た。
「やってみたかったな…。造成アバットメント工法」
知っている知識はやって見たい。
今回はそっちの方が手間が掛かるので泣く泣く止めた。
今の所、仮設ダムで堰き止めた水は取水塔から排水している。
排水された水は盆地の縁の高低差を利用した用水路で俺の支配地域に萌えと潤いを続ける。
堰堤の高さが取水塔と並べば完成だ。
最終的にはダムは堆積した土砂で完全に埋まってしまうが。
取水口部の最下層は将来の取水の為、横穴が付いている。
埋まれば地下水取水洞になる予定だ。
土圧の事も考えかなり堅牢に作った。
将来、完全にダムが堆積物で埋まっても取水塔の機能は保たれる。
一応、密度流出排水道はダム本体に付いているので将来ダムとしての機能を使い続ける事も出来る。
あくまで、ダムの目的は砂防で、北の谷を土砂体積で埋めて将来の平野を確保する計画だ。
ダム湖が平野に、貯水が川に、取水塔の水が地下水に変わるだけで、俺の支配地域に必要な水が確保できる計画だ。
ダム天端から降りる道水路がスロープでダム本体の容積を増やし、重力で土圧を受け止める。
かなり大きなダムに成ってしまった。
岩の数が足りなくなる…。
「どっかで地下要塞でも作るか…。何か本末転倒の様な気がするな…。」
当初の目的は何だったけ?
『ピコン』
頭の中で映像が立ち上がる。
南のダム監視塔の映像だ。
侵入者警報だ、始め派手な警報にしたら夜な夜な鹿の大群が良く通るので、鬱陶しいので電子音だけにした。
「ふむ…何も無いぞ?」
ズームにする。
何か動いている…。イノシシの群れか?いや!
「むっ!着衣を着て杖を付いている!!」
最大望遠の映像にはダム堰堤を見上げる集団だ。
大小バラバラだが、動物の毛皮の腰ミノに背中に蔦を編んだ背負子…。
一体、吹流しの様な布を棒の先に付けた、旗を背中に立てている。
しかも全員二足歩行だ!!
「人類がやって来たのか!!」
思わずテンションが上がる。
南ダム防衛隊のゴーレムを
うむ、コケ生す石像に成っているがオールグリーンだ。
「いや、待てココで殲滅してしまっては…。」
次のお客さんが来ない。
4人の大きな個体がダムの階段を上り始めた。
ソレほど急斜面にはしていない。
難なく上がってくる。
下で待つ集団は腰を下ろして荷物を広げている…。
「モニター内の人類が26名…。お、子供も居るのか?」
子供を背負っていた様子だ。
「子供も入れて32名か…。」
階段を登る固体は杖ではなく、槍だ。
自然木に石を縛り付けた斧も持っている。
「石器時代なのか?」
恐る恐るダムの縁を覗く人類…。
緑色だ…。
「は?この星はガ三ラス星人なのか?」
いやいや…。肌の色で差別する気は無いが…。
俺は骨で皮膚も無いから気にしない。
「彫りが深い顔だな…。」
犬歯が口からはみ出ている…。
「肉食か…。」
動物の腰ミノに…。木と石器…。
岩ゴーレムと良い勝負か?
「いや…、一番大きな個体でも小型ゴーレムより小さい。」
頭二つ分小さい。
身体は骨太マッチョだが素手で岩を砕く様には見えない…。
「岩を砕くなら岩を武器に使う訳が無いか…。」
映像からは斧は磨製石器に見える…。
自然石だ。
チャートかもしれない。
「いやいや、ココは異世界、不思議生物が居ても可笑しくない。」
骨が歩いてる位だからな…。
いや、魔法が有るのだ。
乗り越えた人類が2名、ダムを越えた…。
ダムの横の泉を見ている…。
水質は良いハズだ…。
泳ぐ水鳥達も逃げない、人が危険だと思っていない。
魚と水鳥に注意を払っている。
「ほう、こちらに気が付いたな?」
泉から
散開してじりじりと接近している…。
ココは攻撃は控えよう…。
「さて、人類挨拶PVでも用意するか…。」
一応作って置いた自己紹介映像だ。
言葉が解らない生物でも理解できる様にこの谷の歴史と俺の土木活動。
建設物の破壊は攻撃を行うという警告に、水を汚すな!との警告だ。
後は重要なのは城に進入すると殺すという重要な警告だ。
無論、塔の中の豪華部屋の映像付だ。
冒険者への撒き餌だが…。
「問題は触ってくれないと上映できない…。」
そうだ、水饅頭達にも実験したが、ゴーレム本体に触れないと通信できない。
なお、水饅頭達は映像を見せたが理解できなかった。
「道具を使う人類なら理解出来るハズだ…。」
さあ、さわってごらん。
噛まないぞ?
広がりながらヒザ下の草を掻き分け接近する緑色の人類。
ダムの上で待機している個体も緊張している。
監視塔は人が入る入口は無い。
入口が無いのを確認すると…。
途端に興味を失った様子だ。
「おい!近づけよ!!触れよ!!コッチから行くぞ!」
しかしゴーレムを動かすと逃げそうだ…。
周囲の探索に切り替わった緑色人類…。
「ふむ…。触ってくれないかな…。」
玉座に座り顎を捻る。
監視塔でも中継器でも良いのだ…。
ガ三ラス星人は、ダム防衛隊に気が付いた様子だ。
「いぃーゾ。さあ、触れ。」
映像の動きでテンションが上がる。
草原に並ぶ苔生す攻撃型ゴーレム達だ。
もう何年も動かしていない。
分散配置しているので、その一部に気が付いた様子だ。
「さあこい!さわってさわってーぃ。」
『攻撃を受けました…。ダメージ0。迎撃を開始しますか?→YES NO』
「NOだ!NO!」
動かないのを確認するために石を投げて当たった様子だ。
「一応、知能は有る様子だ…。これはイイゾーー!」
石斧を持った個体が接近する…。
恐る恐るだ…。
「さあ、怖がるな!さわってごらん!!」
固いだろ?
こちらの準備は完了だっ!
『イシ?』
良し触った!!
思わず立ち上がる!
映像開始!!
画面の隅に
何もない過酷な荒野。
カッコイイ全身黄金マスクの俺がカッコ良くポーズをキメながらゴーレムを作っている。
大きな穴を掘り続ける数万のゴーレム達と巨大蜘蛛型ゴーレム。
岩を積み上げ巨大な堰堤が出来上がる。
中継器を立てるゴーレム達に…。
城の中の巨大な塔からレーザーを出して雨を降らせる…。
繰り返しの音声は。
”我は、神から、この地を与えられた支配者なり…。我が財宝を奪う者には死を与えん。”
早回しに荒野に草木が伸びて巨大な穴に清らかな水を湛えて魚が泳ぎ、水鳥が浮かぶ映像だ。
クククク…。さあ次は財宝が一杯の部屋だ!!
どんな顔するかな。
『…。…。』
何かを言っているが理解できない言葉だ。
音声、翻訳機効かないのか?
「おい!触れよ。一番大事な財宝とダンジョンの話だぞ!!」
『…。…。』
土下座のままだ…。
いや、両手を挙げて拝み始めた。
玉座に座る。
「まあ…。良いか自動で繰り返し流れるようにしておくか…。」
テンションが下がった。
おもってたんと違う反応だ。
なお…。結局このガ三ラス星人達はダム近くに住み着いて。
動かない岩のゴーレムや中継器に毎日の糧を並べ拝礼してから食べる生活を始めた…。
鹿や水鳥が並ぶ事も有るので、食生活は良く解る。
その内、増えて盆地の奥に生活圏を求めるはずだ。
増えすぎたら勝手に戦争でも始めるだろう。
機材を破壊しなければ問題は無い。
でも。こいつ等、宗教有るんだな。
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