第10話:地上制圧4
国敗れて山河無し。
あの草花で萌えた大地は唯の礫砂漠に戻った。
大地は草花の残骸とバッタの死体で埋め尽くされている…。
一体のゴーレム操り、情報収集レベル最大で偵察を行って居る。
膝を付き。
地面を手で掘ると、草花の根は枯れ死んでいる…。
『なんという事だ…。』
バッタの死骸を指で弾く。
乾燥してバラバラになった。
『全てが…。萌えは死んだ。』
大地を乾いた風が通り過ぎる。
水平線の向こうまで、バッタの死骸で埋め尽くされている。
遠くに水饅頭が転がっている…。
『水饅頭?』
思わず水饅頭に望遠を合わせる。
『水饅頭がいっぱいだと…。』
走る…。
石のゴーレムの動きは遅いが走る。
ついたので水饅頭を突いてみる。
「ぷるぷる。ぼくはわるい魔物ではないよ。」
コイツ喋るのか!!
驚いて指を離す。
「…。」
何も言わない水饅頭。
プルプルしている。
指で触れる。
「おなかいっぱーいたべるんだ。」
「おれはやるぜ。」
「はやいものがち。」
「ばたんきゅー。」
ふるえる水饅頭達。
『触れていると会話できるのか?』
指先が触れる。
「だれー?」
「ありがとナス。」
「やるしかナスこのびっくうぇーぶ。」
『君たちは何者だ?』
「うーん。ふえる?ふるえる」
「おなかいぱーいたべます。」
「はじけてふえるぜ。」
「おれはできるこ。」
水饅頭達がバッタの死骸を飲み込み…。
透明な身体の中で死骸が消える…。
『君たちは分解者なのか?』
「ぶんかい?」
「おなかがすくんだな。」
「うまれたときからどんぶりめし。」
『そ?そうなのか。なにか必要な物はあるのか?』
この世界に来て初めて会話した生物だ。
何故かテンションが上がる。
「うーん、とくに?」
「みずがないとふえません。」
何匹か水饅頭の色がくすみ始める。
「アーッ!」
「だめかも?」
「うんだめ。」
「さよなら。」
「またねー。」
強い風が吹いて砂塵に塗れると水饅頭達が弾けた…。
大地に染みを作り…。
饅頭一個から二、三個の丸い殻の球が転がる。
『おい!!』
周囲を見渡し、別の映像に切り替える。
大地が湿っている所に水饅頭がたむろしている…。
本体に戻り思わず叫ぶ。
「こいつ等…。分解者で水分がないと発生できないのか?」
天井のアーチに声が消える。
つまり…。大地を埋めるバッタの死骸を分解して養分に戻すのだ…。
水が必要だ…。
この平野全てに…。ダメだ。
今回の騒ぎで水は尽きつつ有る…。
各、ため池の底は乾きつつある。
「何とか雨を…。」
対空砲の映像に切り替える。
周囲の高空に雲は有るが低空に無い。
積乱雲でも無い限り大地に雨は降らない…。
「なんてこった、今年の水は使い尽くしてしまった…。」
来年の春の雪解け水を待つしかない…。
だが待って欲しい。
上昇気流を作れば積乱雲は出来るのだ。
必要なのは熱量だ。
「対空射撃!!」
空にビームの軌跡が延びる…。
「まだまだ!全砲門開け射撃開始。」
城壁から大量の光線が空に登る。
何も起きない。
空に出来たばかりの雲が流れる。
「くそっ!逃がすか!高空雲に向かって射撃。」
主砲のビームが伸びた先から、閃光が塔に落ちる。
「神が怒っているのか?」
いや、違う、そういえば某電力会社がレーザー避雷針の実験をしていた。
レーザーで大気をイオン化させて抵抗値を減らし雷をコントロールするのだ。
つまり、積乱雲は出来つつある。
無駄ではない。
風下の空にレーザーを集中させる。
雲の塊が徐々に大きくなる…。
「いいーゾ!」
塔の直上に来た雲は黒くどす黒い色だ。
雷光が塔に落ちる。
「やらせはせん!やらせはせんーゾ!!」
大地に影を作り北に消えた。
大地が湿った色だ。
「雨を降らす事に成功したのか?」
当該地域の中継器映像に切り替える。
確かに雨の跡だ。
いや、降った水は少量だ。
だが雨を降らせる事に成功した。
「フハハハハハハハハ、未だ手は在る。」
風は吹いて雲は有るのだ…。
この盆地に降らないだけで、何か切っ掛けが有れば雨は降る。
タイミングを計り効率の良い雨を降らせるのだ…。
アレから連日の研究により10回目の冬までに人工降雨装置を作る事に成功した。
何故そんなに時間が掛かったのか?
雨粒の種になる材料が見つからなかったので液体空気を製造する施設と容器の開発。
そして高空に打ち上げるカタパルトの製造に時間が掛かったのだ。
その長い間に、春の雪解け水はこの盆地を潤し…。
疎らだが、通年を通して草が生茂っている。
遂に草原まで昇格した!!
水鳥がため池に飛来して、安定的にバッタが発生して、ソレをエサにネズミや、小鳥、猛禽類が定着しつつある。
すばらしい、未だ若木だが木々が育っている。
萌え萌えだっ!
鳥達が草木の種を運んで来るのだ!(主にうんことして。)
結果、降雨装置は出番が無くなった。
「クソッ!」
思わず玉座の肘掛を叩く。
ムカつくので来年は
時々、水饅頭達とは会話して心を癒している。
草原を(ゴーレムで)散歩するのは良い気分だ。
なお、付属で出来た技術に無駄は無かった。
空中散布装置の為に航空機を作る事に成功した。
空気圧縮機を作る事に成功した。
何と言っても10Km間隔で設置していた中継器で盆地を全て埋め尽くす事に成功したのだ!
俺は遂に、この盆地を征服した!!
仕事にあぶれた小型ゴーレム達は盆地を囲む山脈の中の要塞化に着手している。
理由は建築資材の枯渇だ。
アレだけ有った”岩”が全て無くなった。
岩と石灰岩が取れた!
岩塩もだ!
元々、ダンジョンを作るために採取した岩が中継器設置工事途中で尽きたのが原因だ。
物資欠乏でかなり頭を悩ませた。
蜘蛛型ゴーレム達は盆地の縁に沿って用水路を建設中だ。
盆地北部、上流で取水した水を高低差を生かし盆地全てに行き渡らせるのが目的だ。
コレで雪の少ない年も安心だ。
山脈の上、高度4000mを
空気が乾燥しているのだ…。
対抗策で、地上からカタパルトで高度6000mまで上昇させ、散布を開始する
盆地の何処かに落下する。
グライダーは回収して使っている。
何せ、空気瓶が貴重なのだ。
主翼の構造も手が込んでいる。
部品をリサイクルしながら修理して使っている。
人工降雨に
しかし、
接続を増やすと、まるで空を飛んでいる気分だ。
西側山脈の向こうには大三角洲で平野が広がっている。
扇状地で森と川が入り組んでおり、先は湖か湾だ。
遥か、西南西に海がある…。
斜面には大型哺乳類と人型生物、鹿の様な山羊の様な生物を発見した。
北側には嘗ての我が盆地の様な礫砂漠の谷が8000m級の山脈の麓まで続いており。
東側は1000-2000mの山々が連なって急峻な谷と岩底に水が流れている。
森林は少ない、大型哺乳類は生存が厳しいだろう。
今の所、夜間飛行でも人の明かりは見つかっていない。
神様、何のためにこんな所にダンジョン作ったんですか?
結局、森が育つまで何もする事が出来ない。
北側盆地の入口にダムを建築しよう…。
年間を通して安定した水量を確保出来る様にしたい。
流れ込む礫を上流部で食い止めて水源として使いつつ…。
新たな開拓地候補に北の谷を土砂で埋めて森林に改造するのだ。
谷は狭いので重力式ダムでゲートレスにしよう…。
取水塔を建てて地下水を安定的に放流しよう。
眠っている蜘蛛型ゴーレム達に仕事を振るのが主な目的だ。
コレで後、30年は仕事が出来る。
そう、土木は国の礎で仕事し続けなければならないのだ。
盆地全体の要塞化が終われば。
その頃には、この盆地は大森林だ。
塔のゴーレム達を最低限残して全てダム建設に振り分けても良いだろう。
占領地が増えて手が足りなくなる。
足りなければ作ればよいのだ…。
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