第4話:ゴーレム
日が落ちるまでにダンジョンに戻ってきました。
不貞寝中です。
ダンジョンの中は涼しく快適。
外の日中温度は真夏並みですが。
深夜には氷点下に下がる様子です。
雲ひとつ無い、夜空の星が綺麗です。
放射冷却だコノ野郎!
遠くに雲はみえるのでこの星の何処かには液体の水、海がある筈だ。
酸の海でない事を願おう。
残念ながら確かめようにも周囲100Km圏内に液体は無い。
それどころか、草木一本生えていないかもしれない。
この骨の身体はお腹も空かないし眠くもなりません。
暑いとか寒いとかは気にならない。
温度は解ります。
人間の時にこんな身体だったら…。
ずっと仕事できる。
「しかし、生身の身体で
乾燥と高温でミイラに成るのは間違いない。
いや、リッチになったからこんな過酷な状況に放り込まれたのだ。
悩んでも仕方が無い。
洞窟の外が明るくなり始め。
思い立って、お布団の中から飛び出すと(比ゆ的表現)
壁を殴る。
形を想いながら壁を殴るとその形になる。
「何がダンジョン経営だ!
俺が箱庭ゲームだと!!
昔、物凄いやったぞ!!
ダンジョンと言われたので一階層を迷路にしよう。
さくさく壁を殴る。
24時間戦えます。
365日殴ります。
とりあえず何も考えない。
罠も仕掛けない。
いや、何か作る空間だけは確保しておこう。
「せいやー!!」
正拳中段突きを喰らわせる。
空手通信講座で一ヶ月の成果だ。(それ以上は飽きて止めた。)
拳が触れると岩が無くなる。
他の空洞に繋がった。
見覚えがある。
「しまった。ついうっかり。気分が乗りすぎて隣と繋がってしまった。」
頭の中には今まで掘った地図が浮かんでいる。
体感的には不明だが、かなりの時間を費やして掘ったハズだ。
時々出てくる水晶、未だソレ以外は出てこない。
解ってはいるが鼻歌交じりに気分で拳を振っていると、つい停止位置を忘れてしまう。
勢い余って以前に作った壁を打ち抜いてしまった。
しかし大丈夫、壁を思い浮かべながら岩を取り出すとブロック塀に早代わり。
コレに気が付くまで長かった。
穴を塞ぐと無骨で自然な岩肌が綺麗な石壁ブロックになり、悪目立ちしている。
今まで掘った穴は全て自然の凹凸岩壁だ、全てをブロック石壁にリフォームするのはめんどくさい。
間違った時はブロック岩肌に門をイメージして加工する。
無論、開かない。
壁の一部で厚さ5m。
如何にも鍵が有れば開きそうな石の扉。
つまり、フェイクだ。
「その内、一方通行扉や動く歩道も作ってやるからな。」
無論、そのまま落とし穴にダストシュートだ。
完成するのはコノ岩山の更に地面の下まで掘った後の話だが。
「ふう、疲れてないけど休憩しよう。」
頭の中の”岩石”を指定して、”椅子”を思いながら取り出す。
出てきた石の椅子に座る。
残念ながら岩石を一度加工するとそれ以上の再加工は不可能の様子だ。
頭の中には実験結果の”椅子 8”、”机 2”の表示だ。
又、増えるが問題は無い。
何せ今”岩石 145083”だ。
コレからも無限に広がる大岩石だ。
特に疲れてないが休憩して考える。
骨は疲れない。
疲労物質を出す筋肉と脳が無い。
落ちている小石を握る。
粉々に砕けた。
骨の指からすり抜ける砂。
筋肉が無くても力は有る…。
当に不思議生物だ。
いや、生きてない。
死んでいる。
死者の時間は無限だ…。
「しかし。時間が掛かり過ぎる。もっとこう、工作機械とか無いのかね。」
何せ殴る壁は沢山ある。
異世界シールドマシンなんてあれば自由自在だ。
たぶん、直線しか掘れない。
頭の中の魔法一覧を覗く。
コレも気が付くのに時間が掛かったが魔法が貰えていたのだ。
「光の魔法、炎の魔法、水魔法。風魔法、土魔法、移動魔法?、雷魔法にアイテム製造、アンデット製造、ゴーレム製造…。」
数が多い。
だって、リッチだもの…。
ふう、沢山在るが使い道が今の所無い。
理由はコレだ。
「移動魔法。」
”転送ポイントがありません。”
「うむ、使えんな。アンデット製造!!」
叫ぶと頭の中に文字が出る。
”死体を指定してください。(新鮮な素材ほど素早さが上がります。)”
視界にターゲットレチクルが出るがこの穴に死体は無い。
俺以外な!
「キャンセル!ゴーレム製造!」
”素材を指定してください。”
今回はレチクルと収納物一覧が出た。
一覧が廻ると製造可能な素材には色が付いている。
「ほう…。」
拾った水晶でもゴーレムが作れるのか…。
水晶を指定すると…。
”材料が足りません。”
まあ、ココは豊富な岩石で…。
素材を再指定する。
”製造を行います、造詣を選んでください。”
目の前の二歩先の空間が”みょみょみょみょみょーん”と歪む。
「造詣って…。」
特に思い浮かばなかったので昔MMORPGで俺のアバターだった重装鎧を思い出す。
”みょみょみょ”空間が消えると、空手の重装鎧が石像だ。
盾も武器も装備していない。
「うむー。こんなんだったかな?」
思ってたんと違う…。
モニターの向こうの俯瞰したアバターの1/1石像だ、何か違和感が在る。
立ち上がり背中に廻る。
「おお、確かに。こんな感じだったな。」
何故か自分のアバターは背中を見る時間が多いので良く解る。
手で触れる。
手触りが岩だ。
右手を見て驚く。
「おい!俺の小指!!」
小指の先の骨が無い!!
両手をわきわきして確認する。
「右手の小指を落っことした!!」
痛くないけど…。指摘めした様な姿だ。
「まじかー!探さないと!!おい、ゴーレム!俺の小指の骨を捜せ!!」
命令するとゴーレムがゆっくり動き。
自身の顔を指差した。
「は?どこ?」
「…。」
無言のゴーレムは
つまり…。
「ゴーレム製造!!素材は岩。」
更に、もう一体同じゴーレムが出来る。
両手を見ると、今度は左手の小指の先の骨が消えている…。
「おい、コレは…俺の骨を使ってゴーレムが出来るのか?」
俺が資材の一部?
がーん。だな。
コレでは206体で打ち止めだ…。
いや、その内28個は頭の骨だ。
止めておこう。
足の親指の骨とか無くなったら歩く事ができない。
親指と中指の骨を失うと棒を握る事が出来ない。
「まあ、良い。お前ら、コレから穴を掘る事は出来るか?」
二体のゴーレムは微動だにしないが、肯定している。
「やって見ろ。」
壁を指差すと二体のゴーレムがゆっくりと進み壁を殴る。
同じ動作で揃っている。
音も無く壁が消える。
「魔法…。で掘れるのか?」
何故か頭の中の岩石の
「もう一度…。」
さらに殴ると”岩石”が二つ増えた。
「収納…。が繋がっている?お前達は俺の分身なのか?」
首を傾げるゴーレム。
先に作った方を見ると。
”岩石ゴーレム1”の
クリックする。
視界の一部に全身骨格が映る。
「むっ!」
身構えると全身骨格が動く…。
コレは…。
右手を頭の上に置く。
視界の隅の全身骨格も右手を…。
ゴーレム1の視界なのか?
ゴーレム2に合わせると更に視界の隅に全身骨格…。
二体合わせて立体視…。では無く、ゴーレムの見ている映像を見ることが出来るのだ。
脳内MAPを確認するとゴーレム1、2を示す光点が出ている。
コレは…。便利なのか?
とりあえず…。脳内MAPで
つまり脳内で指示を出すとその通り動くのだ。
視界も見える。
「コレは…。何処まで遠隔操作出来るのだろうか?」
取り合えず実験だな。
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