第3話:転生
多分この世界の
「知らない天井だ…。」
岩がむき出しの天井に向かってお約束。
数メートルの岩穴の奥、行き止まりに仰向けに寝そべっているのが解る。
何故なら頭の中に地図が出ている。
「洞窟か。」
岩がむき出しの岩は酷く乾燥している。
うむ、湿気が無いのは良い事だ。
イマイチ薄暗いが…。見えるので良い。
壁に手を付き立ち上がる…。
視界に入る白い手…。
細い、骨の様だ。
「えっ?俺の手!骨!!」
思わず動かして確認する。
この骨!動くぞ!!
白い手には弾力が無く関節の間には軟骨も無い。
骨と骨はくっ付いていない、浮いている。
「どうなっているんだ?」
洞窟に俺の声が反響する。
身体を見下ろすと細い足も白い骨、自由に動かせる。骨盤と背骨。
嘗て学校の理科準備室で見た骨格標本そのままだ。
アバラの間には暗い背中の向こう側、胸骨と背骨の間に黒い球が浮いている…。
暗闇の中に光る黒い光だ…。
弱点モロダシじゃん。
いや、その前に骨盤に何も肉が無い…。orz
「俺の異世界ハーレムで子沢山計画が…。いや、待て。」
自分の顔に触れる。
顎先からゆっくりと触れている。
堅い、体温は感じないが熱いとか冷たいとかは解る。
指先の白い骨が見える…。
頬に肉も無く奥歯に直接触れる
眼窩の中に指が入る。
視界を占める指の骨に違和感を覚える。
目玉が無いのに見えている。
完全に俺は骨だ。
神に望んだ言葉を思い出す。
「
両手を頬に当てたまま、ムンクで叫ぶ。
くっそ!騙された!!
思わず、行き止まりの壁の岩を殴る。
岩の壁が崩れて無くなる、人…いや、俺が立って入れる位の高さと幅と奥行きだ。
手は痛くない。
頭の中には
”岩石 1”
と出ている。
「掘ったのか?いや。収納した…。」
軽く壁を叩く。
変わらない。
壁を殴る。
壁が消えて、更に岩壁。
頭の中には
”岩石 2”
痛くない。
更に殴る。
ムカついて無いけど壁を殴るきんにくが無い。
だって骨だもの。
殴りたくないが殴ると消える壁がある。
そんなときに!壁殴り。
初心者でも殴ると消える壁がある。
「あははははははははははははははははは。」
俺は削岩機だっ!!
百烈拳を楽しんでいると「ピコーン」と言う音と共に頭の中が増えた。
”岩石 255”
”水晶 1”
「む?水晶を拾ったか…。しかしどう出すんだ?」
頭の中の水晶を出したい。
じっと手を見ると手のひらに収まる水晶がま…。
取り出せるのか…。
暗くても見えるので気にならなかったが振り向くと洞窟の入口の光が小さい。
頭の中のMAPも伸びている。
「
もう少し、詳しいチュートリアルが欲しかった…。
俺は説明書は読まないタイプだったが、幾らなんでも…。
手探りすぎる。
「まあ良い。ここは異世界だ。どんな世界か見てみよう。」
光に向かって歩む。
足の裏が痛くない。
岩の触覚は有るのだ。
温度も解る。
ひんやりしている。
壁に手を付き外に出ると眩しい。
手で抑えるが骨なので何の役にも立たない。
目が熟れて初めての異世界風景が眼下に広がる。
「なんじゃこりゃーーーーーーー!!」
見渡す限りの礫砂漠。
照りつける太陽。
立っているのは岩山の中腹だ。
地平線の先、遠くに山は見えるが緑は無い。
あばら骨の間を熱風が通り過ぎる。
砂埃付きだ…。
「火星かアフガンにでも来たのか…。」
いや、アフガンでも、もう少し緑は在る。
ソレだけ過酷な大地だという事だ。
試されすぎる大地…。
日は高いので岩山を登る。
強い風が吹いている。
何故か身軽に登れる。
切り立った断崖も岩を殴ると消える。
いや、”階段”と思いながら殴ると階段が出来る。
あ、水晶ゲット。
登山道を開削しながら山頂へと進むと360度の視界が晴れる。
周囲を観察する、恒星が直上に近いが影が伸びている。
こっちが北か…。
その先に白い大きな山脈…。
雪を頂いている。
平野の全周囲は山脈に覆われて、南に向かって山脈が低くなっている。
盆地か広い谷間の中央に聳え立つ独立峰がこのダンジョンだ。
広い赤っぽい大地には白い筋が枝の様に広がって、北から南の方に向かい広くなっていく。
川の流れた跡だろう。
「良かった、水は在るのか…。南に海が有るのだ…。いや、谷の出口が。」
北の遥か遠く、連なる山脈には雪がある。
始め、遠すぎて、雲かと思った位だ。
どれだけの距離だろう?山脈が3000m級の山だと200km先からでも見えるはずだ。
9000m級だと360km、だが、ソレくらい離れた和歌山でも富士山が見える所があるらしいので。
条件が揃えば…。
いやいや、この世界の惑星が地球と同じか不明だ。
どうやらココが内陸で水の流れた跡が有る。
干乾びた
古代の川の跡なら風によって消えて無くなる。
毎年か数年に一度位は川になるはずだ。
ならば、伏流水が有るのでは?
川底を掘ってみないと解らないが掘る道具が無い。
「と、言うか無人の荒野だ。冒険者どころか昆虫でも生存できないだろ。」
神様、酷い。
草木一本生えてない。
どうやって生き物を増やすんだよ。
思わず顎が落ちる。
強い風が眼窩から顎に抜けた。
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