第2話:煉獄

「やあ、久しぶりだ。長い人生ご苦労さん。」

何処か解らないが。

何処かの暗闇だ。

「初めてだと思うのですか…。どちら様ですか?」

「ああ、そうかね。このやり取りも何回目か…。まあ、良いだろう。君は死んだ。で、次の生命に変わる。おめでとう。」

何も、めでたくないが返事はする。

「ありがとう御座います、そういう事でしたか。貴方は神ですか?」

「いや?違うよ、創造主ではない。この世界の創造主は…。とにかく忙しくてね、我々の様な物を作って雑務を裁いている。まあ、君達の概念で言う煉獄の炎の様な担当だね。」

話す煉獄の炎と言うのは驚きだ。

自ら煉獄と名乗るなら魂を浄化させ昇華させる様な役割なのだろう。

「そうですか…。」

不思議に思うが納得する。

「うむ、理解してくれて助かるよ、時々、居我儘を言うが居てね。」

魂のクレーマーか。

「うん。で、次に君が転生する生物はミドリムシだ。」

「緑虫…。」

なんだっけ?昆虫ではない。

小学校のころ習ったような…。

最近聞かない名だ。

「ほら、べん毛虫で水の中で、独立栄養生物の、光と無機化合物が在れば生きていける。」

うむ…、光合成系か。

いきなり人間から単細胞生物というのは随分と落ちた物だ。

「いや…。輪廻転生させて頂けるのは大変ありがたいのですが、もっと裕福リッチな生き方できるのは無いのですか?種族は何でも良いのです。ただ…、生物ピラミッドの最底辺と言うのは…。」

「最底辺ではないよ?独立栄養生物が嫌なら、分解者が良いのかね?イクチオボドか…トリコジナにするかね?一応は分解者だ。」

「何ですか、ソレ?」

「あー、淡水魚の寄生虫だよ。白雲病の原因。」

「いえいえ、いくらニートを希望していたからと言って、いきなりリアル寄生虫はちょっと。せめて霊長類に…。」

いきなり、金魚の寄生虫ではそこら辺のホームセンターで売っている薬で駆逐されそうだ。

「ふむ、君の順番だと…。そろそろ降りる頃だ。又、下から頑張ってくれ。べん毛虫ぐらいから始まるのがちょうど良い。」

丁度良いと言う判断基準が解らない。

「せめてミジンコから始まらないんですか?」

「ミジンコは次の次の…又、次だね。」

「先が長いですね。」

マジかよミジンコさん見直したわ。

「いや?意外とあっという間だよ?」

そりゃライフサイクル短そうだけど。

うわー、単細胞生物からやり直しか…。

「何か手は無いんですか?他の生態系ピラミッドとか?」

「ソレだと僕の管理を離れてしまうからねえ…。昨今多いんだよ。人間辞める人が…」

「…。」

うーん、ミドリムシは人間辞めてないのだろうか?

「うーん、解った、それでは。異世界転生者を募集してる所は在るんだ…。まだ、安定していない所だと入植者が居ない…。増えないからね。安定した生態系ピラミッドが出来ていないのだよ。」

「異世界転生ですか?」

おお、すばらしい響き。

「ああ、最近は希望者が多いから…。良い条件のものは無くなるのが早いんだよ。」

「なるほど…。まあ確かにチート世界でリッチな生活も良いですね。」

良い条件とはスキルとかの初期ボーナスの話だろうか?

転生物のお約束だな。

「希望は出しとくけど詳しいコトは向うの採用担当者に聞いてくれ。」

なるほど、職業案内所ハロワか。

面接だな。

「わかりました、ありがとう御座います。お世話になりました。」

ミドリムシよりは良いだろう。

ぼくの意識は掻き消えた。




やあ、入植ありがとう。

君達の世界の様な高位なものが入植してくれるなんて正直助かる。

「どうもよろしくおねがいします。又、暗闇だ。」

希望は聞いているんだけども…リッチな生活?

「はい、豊かな人生が贈りたいのです。」

うーん。正直。うちの世界は君達が居た世界より低位なんだ…。

生物や物質が少なすぎるから…。

「増やせば…。大丈夫です。」

それが。上手く要ってない。

「そうか…。増えないのか…。ぼくがハーレムするしかないか。異世界ハーレムこれ来ます。」

そう言ってくれると嬉しいね。

「え?口に出てた?」

ああ、ごめん、口は無いから思っていれば伝わるよ。

「マジデスカー」

ははは。高位世界の生物は複雑だね。

そうなんだ、世界に生物が満ちて高位生物が増え無いと…。

「豊かに成れない?」

うん。そうだね、数少ない高位生物を維持する為に、物資を供給するダンジョンを作って要る位なんだ。

「ダンジョン?」

そう、ほら…。丁度良い表現が無いのだけど、君達の概念で言うダンジョンだね。

そうしないと折角進化した高位生物が自然環境に負けて低位に落ちちゃうし。

「大変ですね。」

うーん。高位世界の人から見るとオカシナ話かも知れないけど…。

「ダンジョンが在るのか…。冒険者になる転生物かな?」

実はダンジョンを管理する高位生物も足りてないんだ。

どうだい、君?ダンジョンを管理する高位生物第一次生産者に成らないか?

「え?」

どうせ終わって、次の転生しても、もうこの世界だから。

キミの魂が高位の間にダンジョンを一個任せるから生物で満たして欲しいんだ。

「ダンジョンだと高位生物が死ぬのでは?」

うーん。ボクの世界は人族は未だ霊長では無いから…。

竜種や亜人種の方が上だよ?

「マジかよ人類には未だ早すぎる世界だな。」

はははは、おもしろいね。高位世界の人は。

「解りました。ダンジョン経営をやってみます。」

頼むよ。地上の生物を豊かにして、増やしてくれたら嬉しい。

もし上手く行ったら次の転生で豊かな世界になっているからね。

文明が育って上手くいったら次回の転生する時に良い条件を付けてあげられるよ。

「ありがとう御座います。解りました。御社の目指す生命に満ち溢れた世界に協力します。微力で御座いますがお力になれると思います。就活の面接ではコレで行けた。」

うーん、よくわからないけど、とにかく凄い自信だ。


「ご期待に沿えるよう結果を出します。よし、がんばろう!!異世界ダンジョン経営!俺が店長だ。」


じゃあ頼んだよ…。


消えたね、転生したんだね。

でも、珍しい高位生物だな…。

あんな物に成りたいなんて。

偶にはそういう物になって見たいと言うのは…。無いな。


まあ、次はたっぷりサービスしてあげよう。

彼にとっては長い人生だからね。

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