33 コウモリ娘3
朝、目が覚める。
ベッドの布団から腕だけを出すと、寝汗で少しだけ湿った寝間着に朝の冷気が当たった。
体温が冷え鳥肌が立つ感覚が走る。
もう、秋に入りかけているのだなと、僕は体を起こした。
風で窓サッシが鳴っているのか、カタカタと硬質な音が途絶えない。
窓の方を見やると、青い空が見える。
マンションの高い階にこの部屋はあるのだから、風も強いのだろう。
事実、家鳴りのように窓がなる事が住み始めてから半年経つが、幾度なく起こった。
が、どうも違うらしい。
音が近いのだ。そして窓の鳴る音とも違う。
下半身をベッドに横たえたまま、周りを見渡す。
音は近い。
下の方だ。
ベッドの隣……を見ると、彼女がこちらに背を向けて横たわっていた。
まだ寝ているのだろうか?
身を縮め、背を丸め、震えている。
……震えている?
僕は彼女の体に手を添え、名前を呼びながら揺すった。
起きる様子はない。
彼女の頭に耳を近づけてみると、カタカタという音が大きくなる。
不思議に思いつつ、彼女の顔を覗き込む。
「さ……、さむい……」
と、彼女はか細い、いつもの様な高音で、いつもとは違う震え声で言った。
瞼を閉じ、目から入る冷気すらも遮断しようとしてぷるぷると震えて。
――彼女は基本的にノースリーブだ。
翼の面積が広く、腰の下まで膜が繋がっているため、袖付きを着ることが出来ないためである。
動物のコウモリと違い、毛皮もない。
そして外気に触れている面積も広い。
つまり、寒さに対応する能力が極めて低いのだ。
僕は彼女に布団を頭まで被せて寒さから少しでも逃れられるようにした。
このままでは大学に行くのも難しいだろう。
部屋の暖房を入れ、防寒着を出して……今は良いかもしれない。
が、これから来たる冬に向け、更なる準備を重ねなくてはならないだろう。
と、彼女が僕を呼ぶ。
「何?」
僕は彼女の顔に耳を近づけ、か細い声を聞き取ろうとした。
「くっついて……あ、あたためてください……」
寒そうだというのに、彼女の頬はほのかに赤い。
「……お邪魔します」
僕は冷たい空気が入らないように小さく布団をめくり、そこに入り込むことにした。
今日の講義は休むことにする。
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