24 スキュラ娘2
スキュラは海に住んでいる。
正確に言うと、海岸沿いや岸壁の洞窟に昔は住んでいた。
基本的に水辺に住む種族なのだ。
だから水浴びは好きだし出来れば水の中にいたい。
そんな種族だからか都市に住むスキュラは常に不便を感じてると言って良い。
水浴びも自由に出来ず、またプールに行けば冷たい視線を向けられることもしばしば。
混み具合によっては騒ぎの元にもなってしまう。
では家の風呂に水を張ればよいが、それはそれで窮屈さを感じてストレスが溜まる。
だから、こうして貸し切りにしなくては、プールを楽しめない。
「待った?」
後から声が掛かる。
彼女の着替えが終わったようだ。
後を振り返り、彼女の姿が見えたところで前に向き直る。
「裸!?」
見えた。
彼女の腰の下の、色が変わるところ。
白から赤い色に変わるところ、それと控えめな胸。
「良いじゃない。私とあなたしかいないんだから」
すぐ後から彼女の声が聞こえた。
彼女の這うスピードは速い。
蛸足のような脚だけでかなりの速度で這うからだ。
それに、足音も聞こえない。
「だ、だからって」
「あんたになら見られても良いのに」
耳元から聞こえ直後、背中からしっとりと温かい肌が密着される。
控えめだけどしっかり柔らかいおっぱいがまず触れ、次にお腹だろうか。
両腕が僕のお腹の前に回されて手の平がぼくのみぞおちあたりにピタリと触れた。
僕が返答に困っていると、更に彼女は身体を押しつけてきた。
彼女の8本に別れた脚の内2本が僕の脚に絡みつく。
「あんたはなんで私と一緒にいてくれるの? 半分軟体動物なのに。気持ち悪い脚じゃない」
後半はスキュラという種族に対する蔑称だ。
様々な種族が存在する世界でも余り好かれていないためか、彼女達に対する蔑称はいくつも存在する。
可愛いものからほんとうに酷いものまで。
「ぼくは」
「憐れみ?」
僕が言いかけるのを遮るように彼女は問いかける。
「それとも単なる興味? スキュラじゃなくても、私めんどくさい女でしょ?」
別の2本が僕の腰に巻き付く。
「私はもうあなたじゃないと嫌」
誰かは怖いと思うのだろう。
他の誰かは気持ち悪いと思うのだろう。
僕は、だから、そのまま素直に言うことにした。
「最初は、興味だった」
僕に巻き付いた脚と僕を抱きしめる腕の力が強くなる。
「こんなに可愛いのに、なんで一人なんだろうって」
「え?」
力が緩んだ。
ただ、僕の力では彼女の力が強い脚を振り解けそうにない。
こちらから抱きしめてあげたかったのだけれど、ほんと、カッコつかない。
「今じゃすっかり君のことが好きなんだ」
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