23 スキュラ娘1
あまり有名ではないが、スキュラというのは非常に力の強い種族だ。
ただし上半身は普通の人間と同じくらいの筋力しかない。
彼女達が強いのは下半身だ。
蛸の触手のような複数に枝分かれした足であり、骨がない。
にも関わらず、立つと形容できる体勢を取ることが出来るのだ。
蛸を思い浮かべて貰えばその特異性は理解しやすいかもしれない。
蛸は地面にへたり込み、足を這わせるようにするか吸盤で吸い付き身体ごと引き寄せるように移動する。
さらにそこから歩くことも可能なあたり、デタラメだと思う。
口が裂けても僕のお姫さまには言えないが、本当にデタラメだと思う。
だが、立ち、歩くという行動はとても疲れるらしく、家では蛸のようにへたり込んで、足を盛大に動かして移動する。
そして彼女の場合、外では僕に触手を巻き付ける。
今のように。彼女の吸盤がイカの系統ではなくて本当に良かったと思う。
「次あっちね」
背中越しに指を差して方向を示される。
傍目にはおんぶしているように見えるかもしれない。
が、彼女のお尻を支えるなどという行為は許されない。
彼女自身の力によって体勢を維持しているのだ。
僕は素直に彼女に従い、歩みを勧める。
この体勢は辛い。
だけど考えようによってはとても幸せなのではないか。
なんせ巻き付いているのは彼女の生足だ。
しかもぐるぐると巻いているので緊縛だ。
うむ。
ただ視線がちょっと痛いのが玉に傷か。
休日のショッピングモールは特に人が多いためか、視線の痛さもひとしおだ。
と考えて居ると胸の辺りがキュっと締まる。
僕は立ち止まり、肩越しに彼女の様子をうかがう。
どうやら通りかかったお店の中を見ているようだ。
僕もその店を伺う。
婦人服……というより少女向けのファッションショップのようだ。
彼女の視線から検討を着けるに、可愛いらしい、ふりふりのフリルが付いたピンク色の……靴下?
「っ、行くよ! ほら!」
声に出てしまっていたようだ。
お腹を締められて洒落にならないくらい苦しい。
お腹を締め付ける足の1本を軽く二度叩いて「ギブ、ギブ!」。
苦しそうな僕を悟ってくれたのか締め付けを緩めてくれた。
「ごめんよ。さあ、何処に行きますかお姫さま」
「映画見に行くんでしょ。ちゃあんとエスコートしてよね」
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