10 オーク娘2
「もういい!」
オークは力が強い。
一度暴力を振るえば人間は怪我を負う。
酷い怪我でなくとも打ち身や打撲、当たり所が悪ければ死ぬ。
だからこそ、普段からストレスを発散するために美食に走ったり、好きなことをやって自制する。
彼らが豚と揶揄されるのはそういった理由から来る肥満が原因なのだろう。
「なんであなたは私にそんなに良くしてくれるの!?」
彼女の荒い語勢は涙が混じっていた。
「私を怖がって、私に遠慮してるの? あなたも私をオークだからって!」
僕は彼女を怒らせないように、努めてきた。
彼女が望むことなら出来る範囲でやったし、顔色をうかがって察するのもやった。
それが優しい彼女は気に入らなかったらしい。
思えば僕が何か彼女に要求することはなかった気がする。
少しずつ、傷つけてしまったのだろう。
「遠慮なんかされたくなかった! あなたを召使いみたいに扱いたくなんかなかったのに!」
僕は立ち上がり、彼女の腕を取り引いた。
「ほら、少ししゃがんで」
こういうとき、男の方が背が低いとカッコが付かない。
僕は彼女をかがませ、自分の胸に彼女の頭を寄せて抱きかかえる。
抱きしめた彼女はいつもより小さく感じた。
「ごめんね。気を使ってるつもりで使わせちゃった」
彼女のは僕の胸で泣きじゃくっている。
拳を押しつけてきて痛いが、耐えるのも男の甲斐性か。
「僕が君に優しくしていたのは遠慮からじゃない。僕が君にしてあげたかったんだ」
そういえば胸の内を話す事もなかったな。
なんとなく一緒にいて、なんとかく恋人のようにしていたんだ。
「僕は君が好きだ。だから君にはいつも笑っていて欲しかったし、機嫌を損ないたくなんかなかったんだ」
耳に届く彼女が泣き声を堪える音が辛い。
胸が涙で湿り、熱い。
これは彼女を思いやるつもりで勝手していた僕への罰なのだろうか。
「好きだから、愛してるから」
この言葉も初めてか。
「僕は君に尽くしていたいんだ」
彼女の顔に両手を添える。
「上を」
僕が言い終えるより早く、彼女が僕の頭を掴んで引き寄せる。
「っ!」
閉じた彼女の目が可愛いな、とか見当違いのことを僕は唇の熱さを感じながら思った。
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