第4話 自殺少女 その3
駅から徒歩5分の場所にある100円ショップ。
私はそこで適当な紐と足台を買う。
「なんか、疲れたな」
朝だけでかなり体力を消耗した気がする。
……早く
まだ昼前だし、父はまだパチンコ屋にでもいるだろう。
朝のラッシュの時間を過ぎて、空いた電車内で揺られながら
私の父は酒癖が悪くて、女癖が悪くて、ギャンブルが好きな人。
まあ、駄目な男の典型的な例だ。
母はそんな父に愛想をつかせて私が幼いうちに何処かへ行ってしまった。
以前も酷かったが、母がいなくなってからは更に荒れて私への当たりは年々強まっていっている。
子は親を選べないというのは何とも残酷なことだ。
「次は〜〇△町〜〇△町〜」
電車のアナウンスが目的地の名を告げる。
静かにホームに足を下ろして、数時間前に通った改札をくぐり抜ける。
駅の長い階段を降りて、活気の無い商店街を歩く。
ちらりとパチンコ屋が目に入ったが、見なかったことにしてそのまま真っ直ぐ家へと向かった。
「ただいま」
6階建てマンションの一室に声をかける。
勿論声が帰ってくることはない。
けれど毎回なんとなく言うのが習慣になってしまっている。
酒臭いリビングに鞄を置いて、中から百均の袋を取り出す。
早速紐を取り出して、紐を輪にして結んでみた。
……どうにも上手く結べない。
元来、不器用な私はここで手間取ってしまう。
「私の人生、何だったんだろうな」
良いことなんてあっただろうか。
私は前世で大罪人か何かだったのだろうか。
そう考えているとなんだか泣けてきた。
次は、次があるなら幸せになりたいな。
そんなことを思いながら紐を上に固定していく。
今度は誰にも邪魔されないように、玄関とベランダの鍵をしっかりと閉めてから。
これは苦しいってよく聞くけれど、きっとこれなら死ねるはず。
輪っかに首を入れて、ふっと浮遊感が身体を襲う。
───途端、ブチッと音を立てて私は地面に激突した。
「いった……」
首にかかった紐を見る。
百均のだったからか、何度も結び直して弱くなったのか、理由は定かではないが見事に紐は千切れていた。
「……はぁ」
そんなに神は私を死なせたくないのだろうか。
……なんだかどっと疲れが押し寄せて、私は落ちた体勢のまま微睡みに沈んでいった。
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