正しい危険ドラッグの断り方

「風見さん、お久しぶりっす。仕事ないですかー?」


 コンビニの駐車場で、タバコを吸っている男に話しかけられた。

 意外な人物すぎて、買ったばかりの商品が入ったレジ袋を風見は手から落としてしまった。


「あれ? お前らのグループって、芋づる式にメンバーが逮捕されたんじゃなかったっけ?」

「そうですよ。かつての仲間は塀の中です。いまは、根無し草で仕事を探してるんですよ」


「でも、凄いな。捕まってないってことは、あのグループにいたのに、薬物や暴力に手を出してなかったってことだろ。感心するよ」

「いや、おれは人一倍、みんなの役に立ちたかったんですけどね」

「相変わらず、素直な性格だな」

「へへへ。素直すぎるって、よく怒られてました」

「だな。素直すぎるゆえに口が軽いから、取材しやすかった。なんでもかんでも教えてもらえてたしよ」

「そこっすよ、そこ。ビックリしたことに、この性格だから大事なことは教えてもらえてなかったんですよ。おれが知ってる情報や、やってきたことは、ギリギリ法に触れなかったんですって」


 本人は驚いているようだが、風見は知っていた。

 だが、肝になる情報ではなくても、取材をするとっかかりにはいつもなっていた。


「ドラッグもすすめられたけど、使ったらどんな感じなのかとか、どこで買えるかとか、誰にでも言っちゃう気がします。って正直に話したら、わけてもらえなくって」

「それいいな。今度、ぼくもそうやって断ろうかな」

「はい?」


「心底、不思議そうな顔をするなよ。お前の生き残り方は素晴らしいぞ」

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