芸術ニュースの裏側で
取材相手が、言葉を発するまでの時間がかかったため、当時の風見は慌てて録音ボタンを押した。
「街頭インタビューって、あるじゃないですか? 嫌味とかじゃなく、私は知り合いが多いから、よく顔見知りがインタビューに答えてて、それがそのままニュースに使われてるってこともよくあるんですよ」
「具体的に、どういった内容の街頭インタビューですか?」
「なんだったかな、不祥事を起こした芸能人に対して、『はやく、復帰してほしいです』
とか『残念だ、反省しろ』だとか言ったり。結婚の報告をした芸能人に対して、『おめでとうございます』とか『ショックですね』とか知り合いは答えてましたね」
「なるほど、芸能関係のニュースインタビューですか。今回、あなたにお聞きする内容も、芸能関係ではありますね」
「知り合いが答えてたからこそ言えるんですが、インタビューを受けただけなのに、ナレーションは『街のファンの声』とか言いやがるんですよ。あんな風に、ファン扱いをされてしまうのはまっぴらごめんなので、そこらへんはちゃんとしてくださいね」
「ご安心ください。本人の許可なく、取材相手を●●のファンにはしません」
「本当ですか? なんだか怪しいなぁ」
「お言葉ですが。政治の、それこそ選挙やマイナンバー制度が決定するかどうかの時に、芸能ニュースを取り上げまくるようなテレビ局のやり方は、僕のジャーナリズム精神に反しますので」
「じゃあ、話します。彼女が笑わないなんて、なにも知らない連中の戯言です!」
これは、インタビュー内容がくそしょうもないために、お蔵入りした取材記録だ。
風見がお蔵入りした内容でも、ぱんぱんに膨らませば、政治の動向を隠すこともできるだろう。
芸能ニュースが賑わっているときこそ、政治の世界では大きなことが決まっている。
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