第4話 体験談の3
3人目にご紹介したい方は、75歳の男性で、パーキンソン病でした。
当時、病院の売店のコンビニにお願いすると、毎朝希望の朝刊新聞を配達してもらえたんです。
このおじさん、仮にMさんとしましょう。
Mさんは、毎朝、朝刊が届くとすぐにナースコールします。
テレビ欄を見てもらって、プロ野球の阪神戦の放送を確認するのです。
ほぼ寝たきりで、1日1回。強制的に車椅子に座らされて、リハビリ室に連れて行かれますが。
笑顔で行かれてましたので、リハビリが楽しかったに違いありません。
そして、病院の早い晩ごはんの後、首だけテレビの方に向けてもらって、プロ野球阪神戦の観戦、
これが毎日のスケジュールですから、プロ野球の移動日や阪神戦の放送がない日などは、落胆が凄くて。
こんな日は、パーキンソン病の症状が出て、幻覚や幻聴までありますので、一晩中、お祭り騒ぎになります。
看護師さん達は、よくわかっておられるので、晩ごはん直後にはMさんをベッドごとナースステーション横の控え室に移してしまわれますので、他の同室患者が迷惑することはありませんでした。
こんな対応は、神経難病専門病棟なればこそでしょう。
一般病棟では、そんなに気をつけてられません。
騒ぎ出してから対応するしかないでしょう。
それ以前に、パーキンソン病の症状に幻覚幻聴があることは、机上の勉強で、知識としては知っていても、実際に、見たことがないでしょう。
いきなり、パニックのように騒ぎ出されますと、さぞかし驚かれることと思います。
ただ、きっちり準備対応ができる神経難病専門病棟においては、他の患者達にも、そうか、今日は、阪神戦がなかったのかとわかるお知らせになってしまうのです。
同じ病室の他の患者達には、笑い話になっていました。
Mさんのおかげで、辛い病気のはずの患者さんに笑顔が沸き上がりました。
ご本人に、人を笑顔にしようなどという気持ちは、これっぽっちもありません。
難病の患者は、顔の筋肉も萎縮するので、笑顔がつくれなくなります。
4人部屋の、他の3人が笑顔になれたのですから、Mさんの明るさは、大したものでした。
ご本人は、けっして底抜けに明るいような方ではありません。
また、どんより暗い方でもありません。
けっして、はしゃぐようなことはありませんでしたが、何かとお話し相手になっていただきました。
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