第3話 体験談の2
お2人目の方は、男性でALSの患者さんでした。
作者は、入院する時は、基本的に大部屋にします。
いろいろな病気の方々のお話しが聞けるからですが、2人目は、ALSの患者さんで、30代の男性でした。
奥様と、ご結婚されて1年未満の新婚さんでした。
お母様と奥様が毎日様子を見に来られました。
作者からすれば、羨ましい限りで、ある意味、本末転倒されておられました。
S氏としておきましょう。
このS氏、レスパイトと言う、在宅介護での、ご家族や介助者が疲れを癒すための入院制度を利用されておられました。
毎日来てたら、意味ないじゃんと思うのは、作者だけでしょうか。
ちなみに、作者は妻に2週間までは来院させません。
洗濯は、病院内のコインランドリーで自分でやります。
生活動作で、自分でできることを自分でやらせてもらうことで、生きる気力が沸いてくると思うからです。
つまり、自分でやることは、リハビリなのです。
ですから、誰かにやってもらうともったいないのです。
もちろん、作者にも、自分でできないこともありました。
また、後のお話しにします。
毎日、お母様と奥様に来てもらっては、若くて美人の看護師さんとも仲良くなれませんね。
新婚さんには、無用の心配ですがが。
ただ、このS氏、生きる気力を感じることができませんでした。
奥様を、できるだけ早く、自由にしたいということで、自ら命を捨てられました。
作者が、脳出血で、緊急入院した時ですから、7年前のお話しです。
難病患者にも、人それぞれの事情はあります。
7年前ならば、作者には自殺できる体力は、残ってませんでした。
そう、人それぞれ、場合によっては自殺することもできなくなってしまうのが難病なんです。
難病は、治る見込みのないものがほとんどです。
生き長らえても、見えるのは、天井だけの寝たきり生活という自暴自棄になっても責められるものではありません。
人それぞれ、考え方も違うのです。
環境も、何もかも違うのです。
ですから、責める気には、なれません。
しかし、自殺は最低最悪の現実逃避です。
自己満足で自己中で、残された方々のお気持ちなどお構い無し。
しかし、自分の身体を自分で動かせなくなって、上を向いて寝たきり、自分の見える世界はベッドの上の天井だけ。
そんな世界で、ただ死ぬことができる日がくることを待つだけの人生になってしまうのです。
いけないこととわかっていても、作者には、彼を責めることは出来ません。
日本国内では、安楽死は出来ません。
安楽死は、やはり自殺です。
しかし、夢も持てなくなり、癒しもなくなって、天井しか見られませんので、テレビも見られません。
かろうじて、ラジオは聞けますが。
少し違いますね。
夢は、1日でも早く、この世の地獄から脱出して、天国で楽しく。
本当に、天国って楽しいんでしょうか。
作者には、わかりません。
ですから、少なくとも愛する人達を、悲しませて、その上に困らせる自殺は、やっぱり罪悪です。
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