第2話  体験談の1

作者自身が、SBMA(球脊髄性筋萎縮症)の患者でありますので、病院で会った治療している仲間と話した体験談もあります。

作者が患っている、SBMA(球脊髄性筋萎縮症)は、30代から60代の男性が発症することがわかっております。

遺伝子のCAGに異常伸長が見られることで病気の判定が出来ます。

遺伝子の異常ということで、お分かりの方も多いと思います。

遺伝の病気です。

ただ、発症には、男性ホルモンが強く影響していることがわかっておりますので、女性は発症しません。

したがって、男性のみの難病です。

したがいまして、患者数も極端に少なく、医療従事者の方々ですら、聞いたことがないとおっしゃる病名です。

現在、国内の確認された患者数は、約2000人ということで、10万人に1人という割合になってしまいます。

しかも、同じ家系の男性でも、2人に1人しか発症していないという現状があり、いかんせん、研究が遅れている難病です。

作者の場合、最初に症状が出たのは、平成12年(2000年)の1月でしたが、最初、糖尿病からくる体幹の障害と診断されていました。

この場合、もちろん糖尿病の治療と体幹のリハビリで、治らないまでも、ある程度の改善がみられるはずなのですが、いっこうに良くなりませんでした。

そうこうしているうちに、何年も経ってから、症状が進行して、違う病気の検査を始めるということになりました。

もちろん、手遅れですが、それでも、そこからでも頑張れる病気なのです。

SBMA(球脊髄性筋萎縮症)は進行が遅く、頑張れる人は多いのです。

発症の年齢が、中高齢でありますので、頑張れば平均死亡年齢の近くまでは人生をまっとうできるのです。

ただし、寝たきりの人生ですが。

SBMA(球脊髄性筋萎縮症)は、発症からだいたい15年で、完全車椅子生活になるとされています。

病名からもわかる通り、その頃から球症状、つまり球麻痺と呼ばれる飲み込みの筋力低下が激しくなり、誤嚥が多くなってきます。

そこから、誤嚥性肺炎等の呼吸器疾患になることで死亡している方が多いのです。

作者の場合、最初の症状自覚から今年で19年ですが。完全車椅子生活になったのは今年の初夏です。

平均より4年以上も、進行を遅らせることに成功していることになりますが。

これは一重に、助けてくださる方々の努力のおかげであります。

本人には、頑張った意識も努力した意識も、これっぽっちもございません。

作者も、数回の誤嚥性肺炎で入院しておりますので、お話しさせていただいた皆さんのお話しをご紹介したいと思います。

まずは、Tさんとしましょう。

60歳代の女性で、ALSの患者さんでした。

身体が動かせないということを、ご家族の理解がないと嘆いておられました。

そうなんです。

数日前まで元気だったお母様が、突然動けなくなっていくという現実に、ご家族が目を背けたくなるのは、責められることではありません。

当たり前の感情だと思います。

この女性、実は作者とは、ディサービスセンターでも度々同席するお友達で、お互いの体調から悩みまでお話しできる仲良しでした。

ある日のディサービスでのお話しで。

もう、お食事が、喉を通らないから、胃僂を考えているという相談。

胃僂は、最終手段にとっておくべきという作者の考え方から、リキッドタイプの栄養飲料や胃僂と同じ流動食を鼻チューブから流し入れることも選択肢にあることを紹介しましたが、ご主人とのお話しで、胃僂を選ばれました。

胃僂は、お腹に穴を空けて、流動食を流し入れる設備を作って、胃に直接流動食を流し入れる方法ですが、作者の知人は、胃僂すると体力の低下が見られたので、推薦は出来ませんでした。

もちろん、栄養の補給ですので、本来は、体力が落ちるわけないのですが。

やはり、人間は、口から好きな物を、美味しいと感じながら食べるのが一番良いのではないかという思いが出てきた出来事でした。

Tさんは、胃僂の手術から1年半後、ご家族に囲まれながら、静かに息を引き取られました。

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