第4話 腿太郎、鬼を見付ける
鬼を探してえいやこーら。
「鬼を探しているんですが、知りませんか?」
「おにーさん、えらいムキムキだねぇ。鬼なら向こうの町にいるって聞いたねぇ」
「ありがとうございます」
その村にいくと家が全部逆さまにされておりました。
おお、これは凄いと腿太郎は感心しました。
相当な力がないと出来ないことでありました。
しくしく泣いている村人に声をかけました。
「この家を引っくり返したのは鬼ですか?」
「ああそうです。どうしましょう。天井が地面で、地面が天井で。私たちはどうやって暮らせばいいんでしょう」
村人達は困っているようでした。
確かにこれでは使いにくいだろうと腿太郎は思いました。
「それでは私が直しましょう」
「え」
家に手を掛けグルンと回しました。
「よっこいしょ。これでどうですか?」
目を真ん丸にした村人は、腿太郎を見上げ涙を流しました。
「ああ!!きっと貴方は仏様のお使いに違いない!!ありがたやありがたや!!」
その光景を見ていた他の村人達が腿太郎に群がってきます。
「お願いします。うちも直してください」
「うちもお願いします。まだ小さい子がいるんです」
みんな必死で腿太郎にすがり付いて懇願します。
そんな村人達に腿太郎は。
「わかりました。順番に直していきましょう」
ドスンドスンと次々に家を逆さから元に戻していると、地面が揺れ始めました。
地震とは違う揺れで腿太郎が首を捻ると、村人達が悲鳴をあげながら逃げていきます。
「鬼じゃ!!鬼が戻ってきよった!!」
「早く逃げんと投げ飛ばされてしまう!!」
なるほど、ならばこの振動は足音か。
腿太郎は近付いてくる鬼を間違えました。
「お前か!俺のひっくり返した家を戻しているのは!」
大きい鬼が姿を現しました。
といっても二メートル程で、腿太郎とそこまで差がありませんでした。
腿太郎はこれが鬼かとまじまじと鬼を見ます。
赤い肌に白い髪。額には角らしきものが見えます。
「なんだお前。人間にしては大きいな」
見慣れない体躯の人間に鬼も驚きまじまじと腿太郎を眺めました。
それを遠回しに隠れて見ている村人。
「遠くだとどっちか鬼か分からんな」
「たしかに」
そう思うのも仕方がありません。
何故なら腿太郎も鬼と同じくらいのムキムキでありました。
「なんで家を逆さまにするんだ」
腿太郎が鬼に聞くと、鬼が大笑いをしました。
「今ゲームをしているんだ。より多くの人間の家をひっくり返した鬼が勝ちというゲームをな!!」
そんな遊びだったのかと腿太郎は理解しました。
しかしそれでは人間が迷惑なだけです。
腿太郎は考えました。
どうにかして止めさせなければいけません。
「どうだろう。その鬼達も交えて私と勝負をしようじゃないか」
片眉を上げる鬼。
「人間ごときが鬼に敵うとでも?」
「過去にそんな人間が二人ほど居なかったか?」
鬼の雰囲気がその言葉で豹変しました。
「そこまで言うなら受けてたってやる。着いてこい人間」
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