第21話 ララと図書館

 エラが胸を張って堂々と言う。


「ララよ、任せるがよい。すぐに図書館を利用できるようにしてやるのじゃ」

「すごい! ありがとう!」

「そのためには、まずは錬金術師ギルドに登録するのが一番じゃ!」


 エラは説明する。

 図書館の利用は色々なギルドメンバーができる。

 だが、すべての図書を閲覧できるようになるわけではない。

 魔導師ギルドなら魔導書、冒険者ギルドならば魔物図鑑などその分野の本しか読めない。


「ゆえに、錬金術の書物を読みたいのならば、錬金術師ギルドに入るのが早いのじゃ」

「そうなんだ!」

「錬金術師ギルドに入れば、ポーションの買い取り、素材の購入なども出来るのじゃ」

「便利! すぐに錬金術師ギルドに登録しに行こう」

「だが、そのためには……、誰かの弟子にならねばならぬ」

「弟子に?」

「そうじゃ。錬金術師が増えすぎたら困るからじゃろうな」


 エラが言うには、鍛冶ギルドなどもそういうシステムらしい。

 

「冒険者ギルドとは違うんだね」

「そうじゃな。で、ララよ、わらわの弟子になるか?」

「いいの?」

「うむ。わらわに教えられることなどないとは思うがな」

「そんなことないよ」

「住む場所も決まっておらぬのだろう? 適当に空いている部屋を使うがよい」

「え? そんなにお世話になってもいいの?」

「書類上の弟子とはいえ、弟子は弟子じゃ。弟子なら当然の話じゃ」

「何から何までありがとう!」

「気にするでないのじゃ!」


 そして、ララはエラに連れられて、錬金術師ギルドへ向かって登録を済ませた。

 帰りに図書館にも寄った。

 図書館の利用方法などをエラに教えてもらってから、エラの工房へと戻った。

 その日はララの歓迎会が開かれたのだった。



 次の日、ララは夜明け前に起床する。

 ララがベッドの上で体を起こすと、ケロが眠そうに鳴いた。


「……りゃあ」

「ケロちゃん眠いの? まだ寝てていいよ」

「りゃぅ」


 ケロはヒシっとララにしがみつく。

 眠たいのだが、ララとは一緒にいたいらしい。


「ケロちゃん、わかったよ」

 ケロを服の中に入れてベッドからでた。


 ララは顔を洗ってからみんなの朝ご飯を準備する。

 エラ、イルファの分と、自分とケロの分だ。

 ちなみにイルファは近くに家があるのだが、よくエラの工房に泊まるようだ。


「弟子だから朝ご飯ぐらい作らないとね!」

「……りゃ」

 まだ眠いケロはふにゃふにゃしている。


「みんなまだ寝てるし、冷めてもおいしいものがいいね」

「りゃ」


 ララは朝ご飯を作り上げると、自分だけ食べる。


「早速、図書館に行こう」

「……りゃ」

 寝ぼけ眼のケロにララは言い聞かせる。


「ケロちゃん。図書館だから連れていけないんだ」

「……りゃう」


 ララはケロを自室のベッドに寝かしつけてから家を出る。

 餌はちゃんとお昼ご飯の分も置いておく。


「じゃあ、いい子にしてるんだよ」


 そしてララは家を出た。東の空が朝焼けで染まっていた。

 すぐに図書館に向けて走り出す。


 ララは魔法王国の禁断書庫と同じようなものだと図書館を考えていた。

 魔法王国の禁断書庫は、一般的な書庫とは違う。むしろ宝物庫に近い。

 魔王の許可がなければ、誰も入ることが出来ない場所だ。

 だが、許可さえあれば、いつでも入ることができる。


「図書館楽しみ。どんな本があるかな」


 つまり、ララは図書館の開館時間が、数時間後であるとは少しも思っていなかった。


 …………

 ……


「ふう! 思ったより時間かかった!」


 ララが図書館に到着するまでに、三時間ほどかかった。

 三時間もかかったのは、ララの方向音痴のせいなのは言うまでもない。


 迷子になったことが幸いして、図書館は開館していた。

 ララは早速図書館に入って錬金術関連書庫への入室と閲覧許可をとる。


「おお、きれい!」


 書庫に入ったララは少し驚いた。

 魔法王国の書庫よりずっと新しくて綺麗だったからだ。


 もっとも、新しい方が良いというわけではない。

 特に現代の錬金術師は知識を隠したがる。

 最新の研究成果などは本にして公開などしないのだ。

 古い方がむしろ得るものが多かったりする。


「順番に読んでいこう」

 ララは非効率にも端から順番に本を読み始めた。

 錬金術の体系的な教育を受けていないので、必要な本の見つけ方がわからないのだ。


「ふむふむ。知っていることだけかも、次の本読も」


 ララは父母兄から、魔法の教育は施されている。

 だが、錬金術は基本的に独学だ。

 宮廷錬金術師たちの仕事を手伝ったりして見て覚えたりもした。

 それに、暇な時間に豆知識なども教えてくれたりもした。


 だが、宮廷錬金術師の仕事はとても忙しい。

 それにララは魔王の娘。魔導師になるのが当然だ。

 錬金術師たちにララの錬金術への興味はただの好奇心によるものと思われていた。

 そんな状況で、ララに本腰を入れて錬金術の教育を施そうとしたものはいなかったのだ。


「これも知ってることだけかも」

 だが、読書量は多かったので、ララは知識をいっぱい詰め込んである。

 新しい情報はなかなか見つからない。


 そして、ララは異常に本を読むのが早かった。

 無意識で魔法で目を強化しているためだろう。

 分厚い本一冊を、一分ほどで読んでいく。


「次の本読もう」

 錬金術の知識量も多いので、知っている内容か知らない内容かを確認するだけで良い。

 それもあって、ララの読書スピードはますます加速していった。

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