#4.クトゥルフ万歳
「ラッキー」
花田が、ゲームオーバーした。
ここまで来てと思うかもしれないが、個人的好みの展開を逃すわけには、いかなかった。
「あのなあ。そこでトライセイバーが欲望に負けて、敵になびくから面白いの。初めからやり直し」
無茶苦茶、じらされて、花田はふんふんと鼻息が荒い。
花田はおそらく、読者の好みを熟知している。
「これ以上時間をくうと、やり直せないのでは?」
と、花田はプリプリ。
「もう、すばらしくとりすましてるけれども」
と、久咲先生のほうは苦笑い。
「自分が何やっているのか、さっぱりわからなくなりました」
自分が始めたゲームを、投げ出そうとする久咲先生。
「ズガーン!」
と、花田は頭を抱えこみ、うめくように言った。
「今わかりました。おとぎの話でした」
しかし、すぐに元気を取り戻すところは若い。新卒だし。編集部でバイト経験があるだけはあるのだった。
「造反チェック」
気を取り直して花田が宣言した。
「つまり? 今までのことは?」
苦虫をかみつぶしたような表情の久咲先生に、花田は苛烈にも首を横に振る。
「造反チェック!」
「1と1」
ギリワングランプリだね。花田さん。君はいいプレイヤーだな。毎月来てほしい。
「全く寝てないんですけど」
久咲さんはつぶやいていた。
「ずーっと、花田さんも、寝てませんか?」
変な聞き方だった。テンションも、もはやおかしい。
花田は言う。
「ずーっと、ずーっと、ずーっと寝てません」
先ほど居眠りの現場を見たことは、内緒にしてくれるらしい、久咲先生は寛大だ。
レコーダーの音声記録は主にでかい声の花田のほうを拾ってばかり。
「おぞましく」
「肉を喰うとやってくる」
「蝉丸の祟りじゃないですか」
「よく言えば植物人間」
言葉が悪いぞ花田。廃人、では?
「気に入った! 気に入った! すっごく気に入った!」
録音は一回止められている。時間を見ると、つまりは、寝て書くのが一番?
「その通り」
ワクワク……クトゥルフ万歳だ。
「変なの」
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