第89話 魔王の余裕
「ほら返すぞ」
そう言ってハンドが左手を地面に添え、かと思えば激しい揺れが発生した。キングの技よりも激しい振動にキングさえも足を取られそうになる。
「そんな馬鹿な! 揺れさえもあやつは掴めるというのか!」
長老が驚く。ロードスも難しい顔をして見ていた。
「ハハハッ、無様だな。自分の技にやられて一体どんな気持ちだ?」
「…………」
ハンドが小馬鹿にしたように笑うとキングが無言で睨みつけた。
「フンッ。つまらん反応だ」
ハンドが鼻で笑いかと思えば左手と右手で空を掴みキングたちに向けて投げつけてきた。圧縮された空気がキングたちに向けて飛んでくる。
「ライトシールド!」
咄嗟にアドレスが魔法をボールに乗せてショットした。飛んでいったゴルフボールが地面に乗ると同時に光の盾が生まれハンドの放った攻撃をガードする。
しかしパリィイィインとシールドが突き破られ圧縮された空気が迫る。
「
すかさずキングが前に出てバスケットのディフェンスを活かした方法でガードした。
「流石キング!」
「アドレスもな助かったぜ!」
ウィンとハスラーがアドレスとキングを褒め称える。
「いえ、私の魔法は破られましたので……」
「いや。アドレスの魔法があったからこそ威力が弱まり俺もガードすることが出来た。これはまさにチームワークの勝利だ」
「キュ~♪」
キングが自信満々に言い放った。ボールも嬉しそうにキングにすり寄った。
「くだらんな。チームワークだと? 人間らしい脆弱な考えだ。個々の力こそが全てなのだ。そんなまやかしの力など私には通じぬ!」
吠えあげ続けてハンドは地面を掴み振り上げた。地面が土石流のごとく変化しキングたちに迫る。
「避けるんだ!」
「キャッ!?」
アドレスを持ち上げたキングが叫び全員が左右に散った。土石流が突き進み奥の木々がなぎ倒されていく。その破壊力に長老が息を呑んだ。
「あ、ありがとうございます」
「問題ない」
「うぅ、理由はわかるけどぉ……」
「まぁまぁ」
キングに抱き抱えられアドレスは照れてる様子だった。一方でウィンは唸り声を上げている。アドレスの身体能力を考えれば避けるのは厳しいと考えての行動でありウィンもそれは理解していそうだが、やはり思うところがあるのだろう。
そしてそんなウィンの肩をニヤけ顔で叩くハスラーであった。
「しかし、魔王とはここまでの力なのか――これでは防戦一方ではないか」
少し離れた場所で見ていた長老が悔しそうに呟いた。ロードスもどことなく心配そうである。
「いや――そうでもないぞ。俺に一つ考えがある」
「え? 本当キング!」
「何かわかったのか?」
「あの魔王に何か対抗策が?」
「キュ~!」
キングの発言に驚く仲間たち。キングはコクリと頷き、そして魔王に聞こえない程度の声で作戦を伝えた――
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