第87話 魔王の復活と御神木
『コホン。そんなことより、今はこの事態を収拾することこそが先決でしょう』
とロードスが語った。年の件に戻されたくないと考えてそうでもあるが、確かに今は目の前の脅威に対応するのが先決だ。
「確かにその通りだな」
そう言ってキングたちはうなずきあう。ほぼ同時に魔王ハンドが口を開く。
「さて、そろそろ無駄話は終わりだな。貴様らはここで始末させてもらう。お前らなど私の敵ではないが、生かしておいても目障りだからな」
そう言って魔王ハンドがその異様な手をワキワキと動かした。
『気をつけてください! あの手は絶対何かあります!』
ロードスが警告を発した。するとキングがボールを変化させシュート体勢に入る。
「ならば先手必勝だ!
キングが勢いをつけボールを蹴る。サッカーボールとなったボールはキングの必殺シュートで更に巨大な虎に変化し魔王ハンドに襲いかかった。
「フンッ。くだらん」
ハンドが迫る虎に合わせるように右手を振った。その瞬間に虎が消え去る。ボールも一緒にだ。
「な、そんなキングのシュートが……」
「止められた!」
「そんな。こんなこと今まで一度だって……」
その光景にウィン、ハスラー、アドレスの三人は驚きを隠せない。キングの球技が防がれたことなどこれまで一度もなかったのだ。
「無駄だ。私は触れたものを掴み消し去ることが出来る」
「な、それじゃあボールは!」
「え? 嘘、そんなことって……」
キングの両肩がわなわなと震えた。キングにとってボールは大事な友だちであり信頼できるパートナーだった。
キングの球技がここまで磨き上げられたのもボールの協力があってこそだった。
それをハンドは消したという。その衝撃は計り知れない。それは仲間たちにしても一緒だった。
「何だ? そんなにあの玉が大事か? だったら――返してやろう!」
叫びあげハンドが右手を振った。するとキングがハンドに向けて撃った筈のシュートがキングに向けて戻ってきたのだ。
「な、キング危ない!」
「ボールは友だちだ絶対に受け止める!」
返ってきたシュートの圧力に思わずハスラーが叫んだ。しかしキングは避けようとしない。サッカーのキーパーを彷彿させる構えで迫りくる虎を受け止めた。
「うぉおおぉぉぉおぉお!」
キングの体が引きずられるように後退していった。それほどまでの威力――だがキングは思いっきり踏ん張り勢いを殺し、見事ボールを受けきった。
「大丈夫かボール?」
「キュ~♪」
キングの胸の中でスライムに戻ったボールが鳴いた。プルプルと震えるボールの頭を撫でながら無事で良かったと安堵の表情を浮かべる。
そしてキングがハンドに目を向けた。ボールに向けていた優しい表情が一変し険しい顔を見せていた。
「よ、よかったボールは無事だったのね」
「あぁ。だが喜んでばかりもいられないな……」
皆の下へと戻るキング。その姿を認め、ハンドが両手をワキワキさせながら笑った。
「クククッお前は気がついているようだな。この私の手の力に。もっともそれを知ったところで絶望を味わうだけだろうが」
「ど、どういうことですか?」
ハンドの不敵な返しにアドレスが反応した。ウィンやハスラーも気になってるようだ。
「……ハンドに返されたシュートは俺が撃ったものより威力が高かった。恐らくあいつは受け止めた物を強化して跳ね返してくる」
その説明を聞き皆が息を飲んだ――
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