Session/c
真っ白に浮かび上がりたいなぁ。と思う。
真っ黒に沈み込んで身動き取れなくなってしまいたいなぁって、思う。
あたしの思考はそんな夢にも似つかわしくない被害妄想めいた、荒れた気候の気圧にもたらされるらしい目眩ってやつに似てる。けれどそれでもいい。首にかかるかどうかの長さの髪を左手の中指と親指でくるくる、右手の爪を見てみる。どこかの脈の、世界にある青い星の子たちが、こんなことしてたから真似てみた爪の装飾が、けれど誰に見せるでもないから、ああ、キミもあたしと同じく一人なんだよねって思う。でもキミにはあたしがいるよって思う。けど、あたしにはキミがいるわけじゃないんだよね、って、思う。寂しいって、わからないけど、卓の上で膝を抱えて感じる喪失感。これがそうなのだとしたら、よくこんなのをニンゲンは抱えたまま生きていられるなぁ、と思う。あたしは無限に続く命の中で、それが当たり前だし、それが晴れたところで、その先に望むものはないし。だからいいけど、限られた時の中で、寂しい、が一番重たい荷物なら、下ろして仕舞えばいいのにって、思う。
短い髪の毛先は綺麗。それでも寂しさは紛れるかもしれないけど、それが本当に寂しいなのかわからない。人の感じる心の中で一番わかるのは、愛しいだな、って思う。
いろんな世界を作る無数にも分かれていくであろう脈の作る世界を見ていると、どうしても、ああ、凄いな、こんなにも、あたしの箱庭の中で、こんなにも。って思う。
いつか、できることなら、あたしの持てる全ての愛、ってやつで、抱きしめてあげるからねって。思う。
けれど、それはあたしには決められないからごめんねって。
ギュってして、撫でる?ってやつして。寂しかったなあって、わかんないけど、言ってあげてみたいなあって、思う。
思う。
おもう。
想う。
口には出さないけど、想う。
貴方たちはちゃんと見守られているからね。
その、生まれから。
右手薬指の爪が、とある脈の光を反射して、あたしの目を照らしてくる。
きらん、って言うのかな。
光は好き。
照らすことができるからって言うのもあるし、あたし自身は、それに寂しさを感じないから。あれ?寂しさって、やっぱりあのキューってなる感じのやつなのかな?
でも闇も嫌いじゃない。あたしがあたしでいるために必要なもののうち、二つ。光と、闇も。
左手で無意識に指を通した髪が、反動で頰に触れてくすぐったい。
まるでそれに促されるように、壁に走る脈のいくつかを見上げてみる。
果てしなく続くそれたち。沢山の世界。沢山の宇宙。沢山の人。沢山の命。キミたちはこの部屋から始まってるんだよ。何億年も、見守られてる。
ねえ?今どんなことを思って生きているのかな。あたしは存在しているだけだから、生きている、がわからないけれど。図書館にそんなことが書かれてる本が沢山あったから。
少し、あたし自身の顔が笑んでいるのがわかって、恥ずかしい?ってやつになってみる。
でもね?
きっと終わりは来るんだ。
絶対的な終わり。
じゃあ、今一番濁ってる脈を、止めてみよう。
と思う。
壁際まで歩いて行って、そしてその濁りきった脈を、切る。
これで、宇宙、が一つ、壊れちゃった。
ふふ。
ふふふ。
ねえ、寂しい?
ねえ、悲しい?
ねえ、辛い?
ねえ、苦しい?
ねえ。
ふふふふふ。
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