啓示
山奥にあるその集落では、毎年立て続けに災害に見舞われた。
ある年には大雨で洪水被害を受けた。
ある年には台風で家々が吹き飛ばされた。
ある年は大雪で集落の機能が麻痺した。
ある年は猛暑と日照りで川が枯れ、水不足に苦しんだ。
毎年多くの死者を出し、多くの経済的損失を受けていた。
集落の人々は次第にこう思うようになった。
「これは神様の仕業ではなかろうか。」
その集落は信心深い所であった。神社に神を祀り、人々はその神を厚く信仰していた。
「神様は怒っているのかもしれない。便利さにかまけて怠惰な生活をしているから、災害を起こして啓示をしているのだろう。」
「なるほど、ならば勤勉に努めて集落を復興させれば許してくれるのだろう。きっとこの災害は神様が与えた試練にちがいない。」
そう心に決めた集落の人々は、毎年立て続けに訪れる災害を、犠牲を出しながら耐え抜き復興し、また災害の被害に遭っては立ち直るという、ダルマや起き上がりこぼしのように勤勉に努めた。いつかは神様も赦してくれるだろうと信じながら。
それから十数年後、集落にとんでもない災害が起きた。小型の隕石が集落に衝突したのだ。小型と言ってもその破壊力は凄まじく、辺りの山々を半壊にし、地図を書き直す必要のあるほどの被害だった。集落は全壊し、人々も全滅した。もう復興することはないだろう。
変わり果てた集落の姿を、天から神が見下ろしていた。
「ああ、とうとう恐れていたことが起きてしまったか。私が毎年災害を起こしていたのは、隕石が落ちる前に集落を人が住めないような土地にして、人々にその集落から離れてもらいたかったのに、彼らは頑なに集落に住み着こうとした。やはり人間とは分からないものだ。」
神は哀れみながら呟いた。
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