東京編

第15話 御開帳

列車を朝日が照らす。

ビルの間を潜り抜けてゆく赤い列車。

東京、東京にたどり着いた。


「はぁ…」

ホームに停車した鉄郎は、

首をもたげ、新聞を開いた。


<空の脅威、飛空艇の空賊団>


「ひくーてい?」

「驚いたな。

 こんな小説フィクションみたいな…

 私たちが言えたことじゃないか。」

テルに見えるように指をさす。

黄色くて、長い、巨大なバルーン。

「おぉ!ひくうてい!です!ね!」

「はは…」

鉄郎が疲れ切った身体を椅子に預けて

まどろんでいると、

コツコツと、窓からノック音がする。

外には若い男が立っていた。

「はい、なんでしょう?」

鉄郎が窓を開ける。

「こちらへ。

 <品川社長>がお待ちです。」

耳を疑う鉄郎。

「その…社長…って、

 本当にあの…品川社長か?」

「えぇ、そうなりますね。」

消されたのでは無かったのか。

湧き出すモヤモヤを胸に貯めながら、

とにかく、ついてゆくことにした。


駅ビルのエスカレーターを登ってゆく。

ガラスの向こうに見える景色は、

やはり東京。といった感じだ。

都会の風景に興味津々のテル。

はぐれないように。

テルの小さな手を握る

鉄郎の手の力が、強くなる。


随分と上まで登ってきた。

若い男が鉄郎に、

「こちらです。」

と扉の前に案内した。

長らく感じていなかった

重い空気におされ、

鉄郎の手は勝手に

襟を正していた。

「この子は

 私が見ておきますよ。」

「頼む。」

軽く2回ノックして、

鉄郎は重い扉を押した。


「!?」

そこに居たのは、

秘書と思われる若い女性と、

スーツを着て、

ゆったりと頬杖をつき、

まんまるの大きなメガネをかけた、

社長、社長というにはあまりにも…


小さな、小さな少年であった!

「初めまして、テツロー、さん。」

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