第5話 ツバとミツ

「…あのボロっちいヤツで本当に合ってるのか?」

「間違いない。情報通りやってきた、アレが、

"金ツバ"だ。」


鉄朗とテルを乗せた列車は、

岩手の海岸沿いをはしっていた。

ちらほら綺麗な建物が目に入るようになってきいる。


岩手はここ5年で大きく発展を遂げていた。

血管のように張り巡らされた線路は、

ヒトとモノを心臓に、釜石の街に、運んだ。

街では透明な枝が交差し、

慌ただしく光が行き交った。

だが、産んだのは良いモノだけではなかった。

あの三ツ目の黒いロボットも、

この岩手の地が、私たち女神鉄道が産んだモノだったのである。


辺りはすっかり暗くなっている。

今日中に釜石に着くことはできるのだろうか。


テルは飽きっぽいのか、道中で買ったトランプの表裏を無茶苦茶にしてサイドシートに放り投げると、

鉄朗に突っ伏した。

…なんだか湿っている。

見るとテルは頭を擦り付けて、

自らの唾液をコートに塗り広げていた。

…とほほ。


釜石まであと150km。

鉄朗も眠たくなってきて、

今日中の到着は諦めることにした。


そろそろ信号が見えるはずだ。

鉄朗が目をすぼめると、

夜空に赤い信号が1…2、3コ。


鉄朗の全身に鳥肌が走る。

次の瞬間、閃光が静寂を吹き飛ばした!

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