第3話 我汝
駅が近づいて来る。
いまべつ駅、かつての同僚、ハチが戦いの後に割り振られた駅だ。
列車は速度をおとしたのち、
停止位置ぴったりに鼻先をつけた。
鉄朗の腕は昔から良いと評判だったが、
今も健在のようだ。
扉を開けるとテルが腰をおさえたまま小鳥のようにぴょんぴょんとはね、一目散に駆けていった。
「じょーちゃん!おトイレは真っ直ぐいって右さね!」
聞き覚えのある声がした。
改札の前に立つ男の顔。
間違いない。すこし肥えたようだが。
「ハチ!」
男はこっちを見るなり目を丸くして固まった。
何秒か沈黙が流れて、
「…てっちゃんか?」
ハチは大分唖然として昔からのあだ名で呼んできた。
「そうだが…俺ってそんなに老けちゃったか?」
ハチが手を前に突き出してバタバタ振る。
「いやいやいや、そうじゃなくて、
てっちゃんの後ろにある車輌…」
「ああ、これか、そうだよな。
上手く説明できないんだが、
コイツを<東京まで持ってこい>ってさ。」
中に貼ってあったメモにそうあった。
説明不足もいいところだが、
<社長>はそういう人だ。
目的を口にせず、レールだけを敷いてくれる。
私はその上をただ走るだけでよかった。
時代遅れな私には、それこそが最大の思いやりだった。
ハチが再び口を開く。
「ソレ…<ロケリオン>だろ?」
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