第3話 茉優花の隠し事

 人に好きでいてもらい続けてもらうのは難しいことなのかもしれない。 

 どんなに愛したって恋人は他人。

 家族だって仲良く暮らすことが困難になったりする。

 ずっと付き合いを続けていくなんて大変なことなんだ。



 僕は茉優花を疑惑ごと抱きしめた。

 いつもと同じようにベッドに二人で入り込んで愛し合う。

 体を重ねてひととおり手順をふむ。お互いが満足しあったあとは、体を密着させながらしばらくまどろんだ。

 茉優花は僕が炬燵こたつを出したことをやっぱり褒めてくれた。

 嬉しかった。単純に。



 僕は寝入った茉優花を確かめて、こっそり彼女のシルバーの携帯電話を見てしまった。

 ドキッンと心臓が跳ね上がり、血の気が引いた。


「ああ……嘘だろ?」

 高校三年生の時に僕は茉優花に恋をして、大学生になってから付き合って、もう五年だぞ?

 一時期、僕も茉優花も留学したりで遠距離恋愛をしていた時期はあったけれど。

 なぜ、ここまで気づかなかったんだ?

 信じきっていたんだよな。


 茉優花の隠し事を知ってしまった。

 僕は、自分の目からハラハラと涙が出るのを止められなかった。







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