第9章 それぞれの価値
僕は光に包まれて、
ウラニアへと来た。
でもそこは
ウラニアではなかった。
闇
一言で言うと、闇だった。
覆われている。
そんな中、音だけは聞こえる。
(オオオ)
その声とも音とも取れないモノ。
(何があった)
僕は驚愕し、立ち止まる。
そのまま呆然としているが、
(ニーノが待っている)
と、やがて暗闇に慣れた目と、青い剣の光で、歩を進める。
そこには、何処か覚えがある建物。
これはオベロンの城だ。
形は一部しかない。
何かとてつもない力で破壊されている。
ニーノの案内の記憶が僕をここへ導いてくれた。
その時
「よく来たな」
との声。
見ると、薄暗い中に巨大な虫が居る。
全長5メートルはある、暗闇の中のその不気味な赤い羽根。
それは細かく揺れながら動いている。
そしてその中心には、巨大な昆虫のような身体と
ハエのような眼をした化け物。
気持ちが悪い。
これは子供のころ虫に対して抱いた感情に似てる。
僕が見ていると
その虫のような者の手?
には
何かを持っている、
よく見ると、それは
「僕のスマホだ!」
ウラニアから帰る時、オベロンに渡した僕のあのスマホ。
あれをこの化け物が持っている。
(どういうことだ?)
僕は考えていると
「勇者よ」
と話しかけてくる。
「わからぬか?我ガ」
と化物は羽音が混じった声で言う。
「わたしはベルゼブル。偽りの姿は消えた。
これヨり、真の世界をつくル」
偽りの姿?
どういうことだろう?
その時、僕のポケットに何か違和感が、
取り出すと、オベロンの羽の欠片だ。
それが突然動き出す。
そして
ベルゼブルに飛んでいき、
同化した。
「ま、まさか?」
僕が声に出す。
こいつは。
「オベロン!?」
その言葉にベルゼブルは
「理解したか、偽りの勇者よ。」
不気味な笑みを浮かべながら言う
「オベロン!どうして?」
僕は問う。
「貴様は、私のためによく働いた。
そしてあの愚か者ニーノもな」
「なに!?」
ベルゼブルは僕の声を無視して続ける。
「私は、お前からこのスマホを貰い、この姿と力を手に入れた」
ベルゼブルは僕に向かってスマホの合成画面を見せる。
それは闇に光って浮かぶ。
「まさか」
ゲーム内の、ウラニア・ユミールで
オベロンは、自分で、合成してこの姿に変わったというのか?
何故そんなことをした?
「ニーノの力だ、奴は人間界と干渉が出来る不思議な力があった」
と答える。
ベルゼバブは更に話始める。
「私は優秀だった。
だがそれも人間たちが作り出した虚像だ。
私はゲームの中。
そんなことは許されない。
私は人間に創り出されたものではない。
真の私は、このように美しく、強い。
それを思いせしめる、人間どもを征服して!」
(征服だって?)
つまりベルゼバブは独立した存在?
ゲームのプログラムじゃなくなった?
どういうことだろう?
更に
「私は道端にニーノが捨られているのを見て、
こいつは使えると思った。他の妖精とは違っていた」
ベルゼブルは再び語り始める。
「何も知らぬニーノは、愚かにも私を父と信じた。
だから利用してやった」
(利用だって?)
「人間世界の征服のために」
(!?)
僕は、
とにかく拳を握りしめて怒りの感情が湧いてきた。
ニーノに何をしたって?
「そしてニーノを再び捨ててやった。無残に斬り捨て、ゴミとしてな」
ベルゼブブは笑いながら言う。
「・・・」
僕はこれまで他人のために怒ったことがない。
正直関係ないし、めんどくさいと思っていた。
でも
「こいつだけは許さない!!」
僕はキレて剣を構える。
「遅い」
何かを僕に飛ばすベルゼバブ。
僕は素早く剣で防いだ、
はずなのに
「痛っ!!」
左腕の上腕が裂けている。
「?」
僕は現実とは思えない。
でも
その痛みが、現実を教えてくれた。
「ぎゃあ!」
僕は叫んだ。
痛い。痛い。痛い!!
血が止まらない。
嘘だ。こんなはずない。
僕は痛みとパニックで
目が回る。
「もだえよ」
ベルゼバブは再び羽を飛ばす。
「や、やめ」
僕は逃げる。
もうどうでもいい。
逃げなきゃ。
全力で走り出すも、足が思うように動かない。
どんどん迫る羽。
もうだめだ。
ああ、なんでこんなことになったのか
色々振り返る。
これを走馬灯っていうのかな。
学校帰り、たまたまニーノに出会い、
僕達は色んな危機を2人で乗り越えて、
やってきた。
でも、
今、ニーノは、悲しんでいる。
父と信じた人に裏切られ傷付いて。
どれだけ苦しいだろう。
「ニーノ!」
まだ、逃げられない!
僕は羽を素早く、物陰に飛び込み隠れて、交わす。
羽はその壁に突き刺さり止まる。
ここは王座の門。
ニーノに案内された時の事を覚えていた。
この門は相当頑丈なはず、
そう読んでここに身を隠した。
ここに隠れていれば、羽による攻撃は効かず。
ベルゼブブはやがてここに来るだろう。
その時が勝負だ。
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