第5章 出撃
国から1キロほど東に行ったところに、メドン城があるという。
ずいぶん近いな、と思っていたけど、
ここの妖精たちの身長が50㎝程だから
結構な距離なのかもしれない。
オベロン王を始め、兵士や国民たちが見送ってくれる。
敵の城に、ほぼ単身で乗り込む。
ニーノが付いてくるとはいえ、
ゲームの主人公は凄いことをしていたんだなと思った。
王様や兵士たちが手伝ってくれてもいいと思うけど。
どうも城の守りがあるらしい。
本当だろうか?
そんな事を考えていると
「ウラニアに平和を!!!」
と国民たちにエールを送られる。
僕とニーノはそれに答えて手を上げる。
そして僕はニーノは一緒にメドン城へ向かって歩き出した。
やがて、500メートル程歩いただろうか。
僕にとっては、あっという間の距離だけど
でもニーノは
「ようやく半分です、頑張りましょう、りょう様」
と飛びながら少し疲れたように言う。
その時、横の草むらから、何かが飛び出し、僕たちを襲う。
「危ない!」と僕は右手を振りかざす。
すると
(キン!)
といった音がして、青い剣が右手に現れる。
「ありがとうございます!りょう様」
とニーノが言う。
見ると相手はオロバス。体長3m程で息が荒く興奮している様子だ。
僕が何度かこの剣を使って解ったのは、
この剣は僕のスマホが変化してるということ。
そしてその変化が起こるタイミング。
それはスマホ画面の剣アイコンをタップ、
それだけで出現するということ。
(シュー)
と音を発してオロバスはあっさり消える。
後にはレアアイテム。
「やった!」
僕は勝ったことより、このアイテムの方が嬉しかった。
そう、何故かこのアイテムはリアルの
スマホゲーム
(ウラニア・ユミール)に反映される。
「さすが!りょう様!お見事です!」
とニーノが褒める。
「いや、大したことないよ」
と僕はそう言いながらレアアイテムを拾う。
「おっ!」
これは、僕の欲しいモンスターのレアカードの一つだ。
(そういえば)
僕は剣をスマホにしまい、そして
ポチ、とスマホをタップ。すると
そこに道具袋が出現する。
「リンクしてる」
「え?」
とニーノに聞かれるも、
「いや、なんでもないよ」
と返す。ニーノにスマホの事言ってもここじゃ、しょうがないと思った。
それと同時に、更にオロバスが3匹、現れ襲ってくる。
「りょう様?!」
ニーノが焦っている。
それもそうだよね、彼女からしたらどんなに大きく感じるんだろう。
こちらへ飛び掛かってくるオロバス達。
(しゅっ)
と僕は慣れた手つきで、音も響くことなく、オロバス達と違える。
すると、
3匹のオロバス達はあっという間に消滅する。
そしてそこには戦利品のレアアイテム。
「よし!」
僕は思わず喜ぶ声が出る。
「嬉しそうですね!りょう様!」
(ギク)
と僕はニーノを見る。
僕のやる気がアイテム目当てってバレたかな?と思いながら
「嬉しいですよね!勝ったんですから!」
とニーノの純粋さに、ほっと胸をなでおろす。
そしてアイテムを拾いながら
「そうだよ、僕も人間だから」
と返す。
しかし心の中は
(えーと1,2,3。
3個もある!ってことはあと7つだ!)
とアイテムの事しか頭にない。
「りょう様、あれを見て!」
とニーノが何かを指さしながら声高に言う。
その指先を見ると、そこには城があった。
「あれががオロバス達の
とニーノが言う。
「突入しましょう!りょう様!」
とニーノが言う。
いつもの僕なら、進んで何かに突入することなどなかったけど
今は、オロバスを倒した後の、レアアイテムが欲しくてしょうがない。
「了解!!」
と、僕は答えて走り始め、城門へとまっしぐら。
そして
(ポチ)
とスマホをタップ
すると足元がスッと浮く。そしてそこには馬。
地面から現れた馬に乗っている僕とニーノ。
「スレイプニル!」
僕は名を呼んでいた。さっき獲得した、レアモンスターカード。
これは確かスーパーレアの中でも255枚に1枚しか出ないと言われてる。
それを僕は手に入れた。
「いけ!!」
僕はスレイプニルの背に乗りながら、
その嬉しさに思わずテンションが上がる。
その先には、いつの間にか、城門の前に居る大量のオロバス。
うじゃうじゃいて、30匹はいる。
けど
「ニーノ、捕まっててよ!」
と言いながら
(ドカッ!!)
と、そのまま門に突っ込む。
スレイプニルの蹴りの勢いは凄まじく、
そのまま城門とオロバス達を蹴破ってしまう。
「よし!」
と僕は更にスレイプニルをコントロールして(スマホで)
大勢のオロバス達を倒していく。
隅から隅まで。
その理由は、勿論、レアアイテム。
僕は縦横無尽に駆け抜けて
オロバス達を薙ぎ払っていく。
その度に出現するレアアイテム。
「いやっほう!」
僕はかつてない程の大声で喜ぶ。
このレアアイテムの山、欲しかったあのアイテムもモンスターも
今や目の前に近づいている。
そうして
100匹は薙ぎ払っただろうか。
其処ら中のアイテムを回収しまくっていると
「A様、まさか!?」
とニーノの大声。
(ギク)
いよいよアイテム目的がバレた?
と思った。
「あれを見てください!」
と言われる。
見ると、ニーノは僕が戦っているその場所から、
100m先位を指している。
良く見ると、そこには人?が居る
いや、人位の身長だから僕はそう思った。
オロバスとは違い、
身長180㎝位で、その鎧、兜、装備、シルエットは明らかに人型だ。
今やニーノは、スレイプニルに振り落とされないように
肩に掴まっている。
そして
「あれは、メドン!」
と言う。
メドン。
もしかしてボスかな。
じゃああいつを倒せば、
凄いアイテムが!?
僕は俄然色めきだつ。
もう止まれない。
僕はメドンの所にまっしぐら。
「あれがオベロン様を苦しめる張本人、メドンです!」
ニーノは大声で言い、更に僕の気持ちが高まる。
「やっつけよう!」
と僕は答え、スレイプニルと共にメドンに突撃していく。
もう残ったオロバス達に戦意は無く、逃げていく。
その中でメドンだけは仁王立ちしている。
(ん?どういうこと?)
と僕は少し不思議に思う。
ゆっくりとメドンは剣を構え、スレイプニルの突撃を1人で迎える。
その目は、紫色で不気味だったけど、何か決意めいたものを僕は感じた。
それは毛むくじゃらで、醜く赤くデコボコの皮膚。
人とは全く違うはずだったけど、
その時、
まさにスレイプニルがメドンに当たる時、
僕には聞こえた。
《ウラニアに滅びをもたらすものよ》
って。
僕はメドン城を全滅させた。
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