26

その黒炎に吹き飛ばされる形で、カービーの身体は背後の湖に投げ出された。

「カービー君ッ!!」

一瞬だけケインと勝平は視線を交わすと、ケインは黒炎が飛んできた方向に注目し、勝平は湖の縁まで駆け寄った。

「ミサキ、シサキ。帰還するぞ。付いて来い」

黒炎を放った本人────おそらく、シルバーエースであろう人物は姿を見せずにそう発した。

「ちょっと!? なんでシルバーちゃん来てんのよっ! 大将は!?」

状況が良くない方向に傾きだしたのを察知したのか、ケインが慌てだす。バシャン!! という派手な水に落ちる音を立てて以降、姿を現していないカービーも心配であるが、この状況に一人で対応するのはケインには不可能であった。

「……二人とも。グズグズするな」

ケインの問いかけには答えず、相変わらず姿を見せないシルバーは、急かすように語気を強めてそう言った。

「は、ハイッ!! すぐに行きます!!」

「申し訳……ありません……」

苦しそうにしているシサキに肩を貸したまま、ミサキがケインの方を向いた。確実に怒っている表情であった。

「こ、これで勝ったと思わないでね! 今日は引き分けなんだからッ!!」

そう言うとミサキは迷彩服のポケットから何か消しゴムサイズの物を取り出した。そしてそれを握りしめると────

「わおっ!?」

ケインの視界は白い光に包まれた。

 ◇

「クソッたれ……。思ったよりも深いじゃねぇか……」

「大丈夫? カービー君」

「ああ。ワリィな勝平。助かったぜ」

「心配してたけど、相変わらず泳げないんだね……」

湖からカービーと勝平がほぼ同時に岸に上がる。いつの間にか勝平もカービーを追って湖に飛び込んでいたようであった。

「……ああ? アイツらがいねぇ」

びしょ濡れの前髪を掻き上げながらカービーが辺りを見渡す。そこには先ほどまで戦っていた少女二人の姿は無かった。代わりにあったのは……

「目がぁ……目がぁ……」

両目を抑えながらゾンビのようにフラフラと辺りをさまよっているケインの姿であった。

「……何してんだこのバカ?」

「……さあ?」

呆れたような視線を向けるカービーと、不思議そうに首を傾げる勝平はケインを眺めていた。

「んん!? その声は二人か! 無事で良かったアンド助けてカモーン!!」

声の発生源を頼りにフラフラと男二人の元に向かって歩いてくるゾンビケイン。

「気持ちわりぃな……。何があったんだよ」

「た、多分シルバーちゃんが現れて……。そしたらあの二人に「帰ってこーい」って言ってさぁ……。そしたらなんか目の前がピカッて光って……」

「光った? よくわかんないけど、ゲームとかでよく見る閃光手りゅう弾ってやつかな?」

勝平はシューティングゲームをイメージしていた。

「おいおい。逃げられちまったのかよ」

「オレっち一人じゃどうしようもないって!! ……てかそもそもカービーも早々とシルバーちゃんの攻撃で退場してたじゃーん!!」

視界が戻ってきたのか、両手を目元から話してケインが叫ぶ。

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